欧州の交通サービス「MaaS」は日本に根付くか 東急・JR東日本が伊豆で参入、今年が正念場

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観光型MaaSは伊豆エリア以外にも展開を考えていると森田氏は語った。具体的には空港周辺だ。東急は2016年から仙台空港の運営事業に関わっており、来年からは静岡空港も運営開始。さらに来年委託先が決定する北海道内7空港の特定運営事業公募にも応募している。(いずれも他社との企業連合での参加)。

東急のハイグレード通勤バス(筆者撮影)

「多くの空港は二次交通の整備が進んでおらず、しかも地域交通の衰退が進んでいます。その点をMaaSで解決したいと考えています。また伊豆エリアの観光型MaaSには静岡空港が含まれますし、仙台空港においてJR東日本は二次交通に不可欠な存在で、プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスが仙台市を本拠地としており、3社連合に最適の立地でもあるのです」(森田氏)

この観光型MaaSに続いて発表した郊外型MaaSは、東京都市大学、株式会社未来シェアの協力を得て行うもので、ハイグレード通勤バス、AIオンデマンドバス、パーソナルモビリティ、カーシェアの4つを組み合わせ、いつでも安心して移動できるモビリティサービスの構築を目指すものだ。約200人強の実験参加者を公募し、サービス評価や行動範囲の変化などを調査することで、今後の展開可能性などを検討する材料とするという。

日本ならではのMaaSとは?

ハイグレード通勤バスは、たまプラーザ~渋谷駅間の通勤定期券を持つ利用者に向け、平日朝に同区間を走るWi-Fi やトイレを完備した車両。オンデマンドバス、パーソナルモビリティ、カーシェアはスマートフォンのアプリで乗車予約をするもので、前2つは地域住民、最後はマンション住民が利用できる。

観光型MaaSに比べると地域も利用者もかなり限定した内容であり、既存の交通との連携はなく、新規導入交通を使いやすくするためのサービスと言える。シームレスというMaaSの概念に照らし合わせれば、田園都市線や東急バスとの連携も望みたくなる。

MaaSの歴史は始まったばかりだ。現在はパイオニアであるウィムがお手本と位置付けられているが、フィンランドでも都市と農村では異なるMaaSが必要であると考えているように、日本ならではのMaaSは存在するはずである。

その点で東急とJR東日本が提案した「観光型MaaS」は、宿泊施設も擁する民間企業が主導したことを含め、この国らしいMaaSと言えるのではないかと思った。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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