欧州の交通サービス「MaaS」は日本に根付くか 東急・JR東日本が伊豆で参入、今年が正念場
伊豆を選んだ理由については、2次交通の課題、東西方向の交通が不便などの課題を抱える一方で、グループ会社が鉄道・宿泊・物産などを手掛ける地の利を挙げた。JR東日本も伊東線を走らせており、観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」など両社を直通する列車も多い。東伊豆は東京からの観光客が90%以上とのことで、JR東日本との関係は重要だ。
加えて森田氏が口にしたのは2019年4~6月に展開する静岡デスティネーションキャンペーンだった。このキャンペーンに合わせ、伊豆箱根鉄道、東海バスなどもつなげたオール伊豆体制を作り、会社ごとではなく、東伊豆から中伊豆までの乗車券をデジタルフリーパスとして提供すべく話し合いを進めているという。
日本の公共交通は、欧米に多く見られる1地域1事業者ではなく、多くの民間事業者が競合する状況が一般的で、MaaSのようなシームレスなサービス構築には困難が予想される。しかし今回の話によれば、東急とJR東日本に加え、伊豆急、伊豆箱根鉄道、東海バス、複数の地域タクシー会社も参加することになる。実現すれば日本の公共交通業界に一石を投じる存在になりそうだ。
ちなみに楽天は観光業に関するノウハウ提供が主な役回りとなる。東急やJR東日本はインバウンド需要にも期待している。東伊豆での海外分は10%弱で、楽天の力を借りることで伸びしろが期待できると考えているようだ。
気になる住民の反応は?
現地の反応は、交通・観光関係者についてはかなり良いという。現状では需要の伸びが期待でき、現知覚者の負担もさほどではないことが好意的な判断につながっているようだ。
一方住民はピンときていないとのことだが、導入を予定しているAIオンデマンドバスは地元の人も利用可能であり、高齢者の移動問題解消につながることを語っていた。
MaaSアプリはJRとともに開発するとのこと。ただし事前決済は一部に留まるだろうという。多くのバスやタクシーがICカードに対応していないなど、インフラ面に課題を残しているからだ。鉄道事業者はSuicaやPASMOの利用を望むだろうが、施設運営者の負担を考えれば、安価に設備投資できるQRコードがポピュラーかもしれない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら