欧州の交通サービス「MaaS」は日本に根付くか 東急・JR東日本が伊豆で参入、今年が正念場

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フィンランド南部、バルト海に面した首都ヘルシンキは人口約63万人。フィンランド第2の都市であるエスポーや国際空港があるヴァンターなど周辺都市を含めた都市圏人口は約144万人に達する(いずれも2016年1月現在)。東京に劣らぬ一極集中が進んでいる。しかしヘルシンキはさらなる成長を目指し、市の郊外にある港湾周辺や鉄道の操車場跡地など4か所で再開発を行っている。

自転車シェア、レンタカーなども使える(筆者撮影)

この地域に住み、働く人の多くが自家用車で移動すると、交通渋滞などさまざまな問題が起こることが想像できる。すでに3か所は鉄道や地下鉄、路面電車で都心と結ばれており、残る1か所も路面電車を延伸する予定だが、ただ結ぶだけではなく、使ってもらうようにすることが重要だ。そこで導入されたのがウィムだった。

日本語に訳すと「気まぐれ」「思いつき」という意味のウィムは、目的地までの経路を案内するとともに、運賃は事前に一括決済し、定額乗り放題のサブスクリプションプランも用意した。しかも鉄道やバスだけでなく、タクシーや自転車シェア、カーシェア、レンタカーなど、マイカー以外のあらゆる交通手段を使って案内してくれる。

情報公開が成功の鍵

ウィム実現の裏には国や市が主導した情報公開への取り組みがあった。ヘルシンキの公共交通はヘルシンキ地域交通局(HSL)が管理し、ヘルシンキ市交通局(HKL)が運行や整備を行なっている。しかしタクシー、レンタカー、サイクルシェアなどはここに含まれない。異なる事業者が持つデータを第三者が購入・使用することを認めたからこそ、ウィムのような高度なアプリが誕生できたと言える。

筆者もウィムを使ってみた。短期滞在だったのでサブスクリプションではなく一時利用である。アプリをダウンロードし、クレジットカードなどの情報を登録すると、あとは目的地や出発時間を入力するだけだ。

公共交通利用、速さ優先、環境優先のルートが運賃とともに紹介され、好みのルートを選ぶと地図と乗り換え案内が表示されるので、OKであれば下のボタンを押すと支払いが完了。表示されたQRコードが切符代わりになるので、乗車の際に乗務員に見せることになる。

同行したメンバーはタクシーの呼び出しも試した。こちらはタクシー会社が料金とともに表示されるので好みの会社を選択すると自動的に予約が入り、アプリ上に自分が乗るタクシーの番号が位置とともに表示されるので、地図を見ながらその番号の車両が来るのを待つだけだ。ウーバーなどのライドシェアに似ている。

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