レムデシビルは日本救うコロナ治療薬となるか アメリカ発の新薬、国産アビガンより承認先行

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2009~2010年に新型インフルエンザが流行したとき、イギリス・グラクソスミスクラインとスイス・ノバルティスのワクチンがこの制度で承認されたが、それでも審査には3カ月を要した。今年5月に承認をめざすとなると、これから1カ月も経たないうちに審査を済ませなくてはならない。厚労省の医薬品審査管理課は「1カ月切るとすれば前例のないスピード承認になる」と語る。レムデシビルには腎機能の低下などの副作用があるが、果たして十分な審査が行われるか懸念もある。

そもそも特例承認は、海外ですでに販売されている製品が対象となるが、レムデシビルに関してはまだ海外でも未承認。それどころか、まだギリアドは治験データさえ公表しておらず、海外でも日本でも承認申請を行っていない。日本では4月にギリアドの治験が始まった段階に過ぎない。

日本は海外での販売に追随して特例承認か

「あくまで特例承認の適用は企業による申請が前提」(審査管理課)で、安倍首相の発言は期待が先走っているようにも思えるが、すでに政府内ではシナリオが描かれている。今週中に良好な治験データが公表されれば、それを受けてアメリカやドイツで申請して承認される見通し。日本は海外での販売に追随するかたちで特例承認するという流れ。アビガンの治験はレムデシビルより遅れそうだ。

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問題はレムデシビルの入手だ。製造はアメリカと欧州で行われている。ギリアドは現時点で14万人分を確保しており、年末までに100万人分以上の供給をめざしている。日本はギリアドの治験に協力している関係があり、一定の割当は期待できる。ただ、いずれにしろ今後、数十万人規模で確保しようとすれば国が買い上げる必要がある。

新型コロナの治療薬はいち早く届ける必要がある。しかし、国の期待が大きい候補薬だけに、研究結果や審査が歪められることがあってはならない。

今岡 洋史 医薬経済社 記者

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いまおか ひろふみ / Hirofumi Imaoka

1977年生まれ。医薬経済社の日刊紙RISFAXで、医師・製薬企業の研究不正、裁判などを担当。

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