【産業天気図・百貨店】足元は未曾有の苦境、10年春以降も環境好転見込めず、各社はリストラに走る
09年10月~10年3月 | 10年4月~9月 |
百貨店業界の天気は09年10月から10年9月まで、1年を通じて土砂降りに近い「雨」だ。消費不況による売り上げ減が百貨店各社の収益を直撃、09年度は軒並み大幅営業減益。大手はリストラによってかろうじて業績を支える状況だ。
日本百貨店協会によると、09年10月の全国百貨店売上高は前年同月比10・5%減。前年同月割れは実に20カ月連続だ。相対的にみて食品は健闘しているものの、高額品や衣料品の不振が長引いている。消費者の倹約・節約指向に加え、値頃感のあるファストファッションやファーストリテイリング<9983>、専門店やファッションビル等に客足を奪われる状況が続いている。10年春以降も前年割れが続くとみられ、競争力に乏しい店舗は存続の危機を迎えている。
業界各社は生き残りをかけたリストラが進行中だ。三越伊勢丹ホールディングス<3099>傘下の三越では、「セカンドライフ支援制度」(早期退職制度)の拡充プランに正社員の4分の1に相当する約1500人が応募した。地方の状況はさらに厳しく、北陸地盤の大和<8247>が7店中4店の閉鎖を決定したほか、神奈川地盤のさいか屋<8254>も事業再生ADRを利用し私的整理中だ。
このほか業界主要企業では、J・フロントリテイリング<3086>が11月にオープンした大丸心斎橋店北館で、これまで手薄だったヤング層をターゲットとした売場作りを徹底させるなどの試みをしている。この年末年始商戦での効果は限定的とみられるが、中期的にはこういった百貨店ならではの価値訴求、立地戦略が問われるだろう。スリム化とローコスト体質への転換だけが生き残り策ではもちろんないのだ。
(高橋 志津子)
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