NYの「小売業界」は1カ月でここまで激変した 開いているのはスーパーと薬局だけに

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ドライブスルーの設備がないレストランでは落ち込みが大きい。例えば、大手レストランチェーンのパネラ・ブレッドはニューヨーク周辺に180店舗を展開しているが、ドライブスルー設備がないため売上高は自粛要請前に比べて85%急落し、90%の人員を解雇している。

小売店や飲食店などのリアル店舗が打撃を受ける一方で、EC(ネット販売)の利用は急激に増えている。

大手ドラッグストアであるライト・エイドは、3月後半のEC売上高が3月前半に比べて10倍に跳ね上がった。特に、マスクやアルコール消毒剤は一瞬にして在庫がなくなった。

ウォルマートのEC担当部長は、「ネットで商品を補充した直後に振り返ったら、その商品が消えていた」と驚きの声をあげる。大手スーパー、ストップ&ショップの商品部長も「今まで経験したことのない状況」と、食料品がECで急速に売り切れていく早さに驚愕している。あるスーパーでは、ECでパン、バター、卵、ミルク、冷凍野菜、缶詰食品など生活に必要な食料品の一度に買える量を制限を設けている。

宅配便も「非接触」で受け渡し

データ調査のシビックサイエンスによると、食料品のEC売上高については、2019年は1日の全売上高の5%程度に過ぎなかったのに、3月1日には11%に、22日には41%に急増した。

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最近は、顧客がECで食品を注文し、受け取るときも配達員との接触を拒む。そのため配達員は玄関のベルを鳴らし、携帯で知らせて玄関、入口に置いて立ち去る。徹底して接触感染を回避している。

例えば、筆者が利用している宅配業者のポストメイツは、顧客と配達員との接触感染を防止するため、各家庭の玄関先に商品を置いて立ち去る。宅配料月額1000円程度で、何回でも利用できる。

ECでは玩具の売り上げも拡大している。トランポリン、ボードゲーム、パズル組み立てセット、台所セット、塗り絵、マーカーなど、屋外、屋内で遊べる玩具が飛ぶように売れている。調査会社NPDによると、3月21日の1週間でゲーム、パズルの売行きは前の週に比べて228%増、組み立てセットが同76%、アート、クラフトは同70%の増加で、全体では同26%の増加を示している。

アメリカでは依然として高い感染状況が続いており、現在どこも今後の見通しが立っていない。高級百貨店のニーマン・マーカスが破産を申請するという報道も出ており、小売業を囲む環境は厳しさを増している。現在の混乱下での状況をつぶさに見ると、「コロナ後」の消費者の動きは、以前と異なったものになるのでは、と感じる。

高井 一 アメリカ流通評論家(在ニューヨーク)

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たかいはじめ / Hajime Takai

東京都生まれ、日本大学理工学部卒、貿易商社勤務後に渡米、ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でマーケティングを学ぶ。市場調査会社「タカイ・マーケティングリサーチ」を設立。現在、「米国食品流通市場一覧」を毎年連続制作。2020年版を発売。著書に「アメリカの流通革命児;カテゴリーキラー」(ジェトロ)、「米国E流通革命」(東洋経済新報社)。メールはhighwell1@earthlink.net  

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