弘前さくらまつりは2020年、第100回の節目を迎える。同じく中止が決まった弘前ねぷたまつりと並び、出店業者や市内の飲食・宿泊業界の生命線と言えるイベントだ。
しかし、国内の新型コロナウイルス感染が深刻さを増した3月下旬、市はさくらまつりの取りやめを発表し、出店だけでなく、公園での飲食そのものを認めない判断を下した。
ただ、この時点では、ライトアップや桜のインターネット動画配信などを実施する方針だった。地元には衝撃と落胆が走ったものの、メディアは「静かな園内で、落ち着いて桜を観賞するしかない」といった市民の声を紹介していた。
弘前公園は市の中心部に位置し、南北約1km、東西約500m。
人を引き寄せる桜
弘前公園の外堀沿いには市役所や裁判所、地元新聞社、県立高校が並び、通路の一部は生活道路を兼ねる。筆者も10年ほど前に2年間、外堀の前に建つオフィスに通った。当時の上司は春先、「ここは日本最高の通勤ルートだ」と顔をほころばせていた。日に日に膨らみ、赤らんでいく外堀のソメイヨシノのつぼみは、豪雪地帯・津軽の春の喜びを象徴する存在だ。
だが、このような公園の立地、そして市民と公園、桜の関わりそのものが、市にとっては懸念材料となった。
仮に出店がなくても、多くの人々が、春の喜びを味わおうと公園を訪れる可能性がある。県外からも、弘前の桜を愛する人がやって来て、人混みが生まれるかもしれない。その時、安全を確保できるか……?
市は4月1日、公園そのものを閉鎖する方針を明らかにした。地元には2度目の衝撃が走った。困惑の一方で、筆者の友人知人の何人かは「市長の覚悟をみた思いだ」と漏らした。
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