3度目の衝撃が走ったのは4月8日だった。「フェイスブックやインスタグラムなど、SNSでの桜の開花情報の投稿、拡散はご遠慮いただきたい」。
櫻田市長は定例記者会見でこう要請した。さらに、さくらまつり中止と公園閉鎖、SNS投稿自粛要請に至る経緯を同月10日、市民に直接、ビデオメッセージを通じて説明した。
賛否の声、新聞社も報道自粛
咲き誇るソメイヨシノにカメラを向ける人々と無意識のうちに撮影場所を争い、肩やひじをぶつけた合った記憶は、筆者も数え切れない。そして、まつりがなくても、公園が閉鎖されても、日常の通勤・通学路から、桜は視界に飛び込んでくる。国内外の人々を魅了してきた弘前公園の桜は、やはり、人垣をつくらずにはいられないのでは……。思案の末、櫻田市長が下した決断だった。
全国でも例をみない要請には、賛否の声が上がった。実効性を疑問視する意見もあった。一方で、外堀沿いに本社がある地域紙・陸奥新報は4月10日、市の方針を受け、桜に関する報道を自粛することを明らかにした。「メディアとしての使命を自ら一部制約する苦渋の決断です」「ソメイヨシノが散ったゴールデンウィーク明け以降、回顧写真での報道を予定しています」。同社はサイトで告知した。
市民の「春を喜び、桜の感激を伝える喜び」を封じてよいのか。何より、いわば弘前固有の、やむをえない事情や環境による苦渋の決断が、「行政による表現の規制、封殺」の「前例」という形でハレーションにつながらないか――。自分でも整理しきれない思いを抱え、筆者は4月10日夜、メッセンジャーで市長の真意を尋ねた。
直後に、短い答えが届いた。「市民の命と健康を守らなければならない、ただそれだけで、法的根拠や権限のない一市長のお願いです」。
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