今、体育会学生を企業がここまで欲しがる理由  あのスポーツ人材会社が見せた採用の「熱量」

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最近では多くの一般学生がインターンシップを経験して就活を進めるが、体育会学生はそうした時間が取れずにスタートが遅れ、情報量も少ない。そこで自己分析やエントリーシートの書き方、イベントへの参加を促すなど、直接面談し、就活の初期から二人三脚でサポートしていくわけだ。

とはいえ、そうしたサポートがネットでは不可能、というわけではない。非効率にも思えるリアルの機会を重視するのはなぜなのか。そこには採用側の悩みがある。

「ネットで多数のエントリーがあっても、その後のケアができなければ多くの学生が離脱してしまう。体育会学生は情報量が少なく、エントリー数も少ない。ネットでは有名企業でなければエントリーすらしてもらえない」(事業企画室長の久保谷友哉氏)。こうした欠点を小まめなコミュニケーションでカバーしていくわけだ。学生にとっても「こんな会社があったのか」といった気づきになる。

学生の志望が最優先となるため、すべての学生がスポナビの顧客企業に就職するわけではない。上位校の学生の場合、9割以上が顧客ではない企業に就職するという。それでもリアルの取り組みを続けてきたのは、体育会学生は先輩やコーチ、顧問などのアドバイスを頼りに就活を行うケースが多いからだ。実際、スポナビは会員の約7割がこうした口コミをきっかけに登録しており、毎年会員数を伸ばしている。

元なでしこジャパンのトップ選手が現場に

日々、学生と企業をつなぐスポナビには、驚異の経歴を持つアスリート社員がいる。営業を担当する高木ひかり氏はなんと、女子サッカー、なでしこジャパンの一員だ。

女子サッカー日本代表、元なでしこジャパンの高木ひかり氏。「アスリートの気持ちはいちばんわかる。スポーツと仕事を両立させるデュアルの仕事もやっていきたい」と語る(写真:スポーツフィールド)

2002年の日韓W杯を機に、小学生から男子に交ざってサッカーに打ち込み、15歳でU-16(16歳以下)の日本代表に選ばれた。U-17女子W杯では準優勝も果たしている。常葉大学附属橘中学校・高等学校、早稲田大学へと進学し、卒業後はノジマステラ神奈川相模原に所属。そこで日本代表に選出されたトップアスリートである。

輝かしい経歴を持つ高木氏だが、2018年12月に25歳で引退。「選手なら誰でもW杯や五輪で結果を残したい。でも、それが厳しいことは本人が一番わかっている。サッカーだけでなく、いろいろなことを経験し、幅を広げたいという思いもあった」(高木氏)。競技と向き合う中で、一流選手ならではの葛藤があったようだ。

スポーツフィールド入社後は営業として企業に赴き、自身の経験を基に、学生のサポートにも取り組んでいる。そんな高木氏が体育会学生の強みとして指摘するのが、自己解決できる能力の高さだ。「競技では、今の自分に足りない点に対してどう努力し、どうすれば解決できるかを常に考えている。PDCAを回すような考え方が身についているので、仕事も方向性を伝えるだけで前向きに動くことができる」。

採用する企業も、上下関係をわきまえた礼儀正しさや同僚とのコミュニケーション能力、粘り強く仕事に取り組む姿勢などを評価し、体育会学生を求める傾向が強まっているという。「スポーツしかやってこなかったから……と話す学生もいるが、何にも染まっていないからこそ、備え持った能力でなじんでいくことができる」(高木氏)。「私自身も社会人としての経験は少ない」と語る高木氏だが、アスリートならではの視点で企業と学生をサポートし、自らの仕事の幅も広げていくつもりだ。

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