大韓航空「創業一族の経営権争い」で深まる苦悩 双方が4割超の株式確保、争い長期化が濃厚に
幸か不幸か、経営権争いによって韓進KALの株価は高止まりしている。そのため、金融機関からの株式担保貸出によって確保できる資金が増えたことは、趙顕娥氏にとって希望のある話だ。趙顕娥氏は2019年12月20日に金融機関から韓進KAL株式55万0459株(0.93%)を担保にして、新規担保貸出を受け取った。当時の株価は3万8500ウォン(約3400円)で、最大150億ウォン(約13億円)規模の貸し出しを受けたようだ。2020年4月9日現在の株価は、8万5000ウォン(約7500円)にまで上昇している。
とはいえ、借金には利子がつく。そのため、株式担保貸出を増やせない。通常の金利は3~5%で、この条件で返済が数年続く計画であれば、趙顕娥氏が150億ウォン(約13億円)を借り入れたとすると、株式配当金を利子負担が上回る状況がやってくる。となれば、利子を支払うために株式を処分しなければならなくなるだろう。
経営権争いは長期化の可能性
韓進KALの経営争いは長期化するという見方が多い。3者株主連合が臨時株式総会の招集を提案しても、理事会(取締役会)が拒否できる。それでも総会を招集するには、裁判所に対して総会招集許可の仮処分申請が必要だが、裁判所がこれを認めたとしても、現在の情勢をひっくり返す方法はない。
取締役解任は特別決議によるため、出席株主の3分の2以上の同意を得なければ事実上不可能だ。過半数が同意すれば可能となる新任取締役の任命を通じて取締役会を掌握する方法はあるが、韓進KALの取締役会が現在11人であることを考えると、それが可能かどうかは疑問だ。
結局、現在の社長をはじめ社内外取締役4人の任期が満了する2022年まで、経営権争いは続く可能性が高い。しかも今後2年間、趙顕娥氏が株式担保貸出を維持できるかどうか。韓進KAL以外の大韓航空や韓進などの株式も保有しているが、これらを売却しても大きな金額にはならない。
となれば、現在の3者株主連合の中で、趙顕娥氏が得ようとしているものは何なのか。結局は「経営権を得たい」というのが、財界での大方の見方だ。3者株主連合として手を組んだ時から、連合の当事者は「経営に参加しない」ことを確約したと明らかにしている。KCGIの会長も2020年2月、記者会見でこのような確約を公開している。
しかし、「未登記役員」と韓国で呼ばれる、取締役会での議決権を行使しない取締役、あるいはグループ会社の役員として在職できないのかどうかは確認されていない。中央日報エコノミストは3者株主連合に「連合内から韓進KALやグループ会社の議決権を行使しない役員が在任できないという内容の確約はあるのか」と質問したが、連合側は「確認する方法がない」と回答した。これは、趙顕娥氏が間接的な方法で経営に参加する可能性を排除できないということを意味する。
だが、趙顕娥氏が得られるものは多くないという見方もある。財界のある関係者は「3者株主連合が経営権を持ったとしても、それ以降が問題だ。趙顕娥氏が保有する株式の価値はさらに小さくなるだろう」との指摘がある。(韓国「中央日報エコノミスト」2020年4月20日号)
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