新卒の「3年後定着率」が高い300社ランキング 学生と企業はコロナ禍にどう向き合うべきか

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3位は、入社人数43人で九州地方地盤の都市ガス大手、西部ガスだ。2015年から社員の志向をキャリアに反映する「選択型育成フィールド」を導入するなど、人材育成施策に取り組んでいる。不動産や海外事業など本業以外の事業拡大を目指しており、グループ横断的な採用・研修・配置を進めている。また、インフラ企業としての安定した業績も定着率の高さの一因と考えられる。

このほか、入社人数が30人以上の定着率100%企業は、総合不動産大手の三井不動産(41人)、スポーツ用品大手のミズノ(37人)、新潟県を地盤とするゼネコンの福田組(33人)、産業用部材や美容家電を展開するマクセルホールディングス(32人)だった。

人手不足でも高定着率の小売企業

定着率は業種ごとの偏りが大きい。製造業など人材育成に時間がかかり、企業固有の技能を必要とする業種では定着率は高い。一方で、人材が流動的な非製造業は定着率が低く、特に人手不足が深刻化している小売業やサービス業は平均を大きく下回る。しかし、そうした業界でも、ランクインしている企業はある。

小売業で最も定着率が高かったのは、「LOHACO」などオフィス用品配達サービスを展開するアスクル(164位、95.2%)だ。同社は労働条件の拡充やダイバーシティの推進に取り組んでいる。

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例えば、有給休暇取得率は78.1%(2018年度)、女性部長比率は21.4%と、いずれも業界平均を大きく上回っている(小売業平均はそれぞれ46.6%、4.8%)。充実したワーク・ライフ・バランスへの取り組みが新卒社員の離職を抑える要因になっていると考えられる。

また、同業2位は百貨店大手の髙島屋(292位、92.5%)だ。同社は大手百貨店の中で唯一のランクインとなる。各種研修や社内認定ライセンス制度などを整備しているほか、女性管理職比率も32.4%と高い。若手の女性社員にとって、身近にキャリアモデルがあることはモチベーションの維持に好影響だ。実際、同社の女性社員勤続年数は24.7年(2018年度)と非常に長い。

両社に共通しているのは、「働きやすさ」への着実な取り組みだ。定着率の低い業界では、より一層の働き方改革やダイバーシティの拡充が重要になっていくだろう。

学生は冷静な情報取集を

近年は雇用の流動化や専門人材ニーズの高まりもあり、新卒社員の「とりあえず3年」説は揺らいでいる。実際に、本調査でも3年後定着率は低下傾向にある。今年の定着率100%企業は78社で、前年の103社より25社減となり、平均値も81.1%と昨年の82.3%から減少した。

キャリアアップなど前向きな理由による離職の増加は、本来好ましいことかもしれない。しかし、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、3年以内に「初めての正社員勤務先」を離職した者の離職理由は、労働条件や人間関係のほか「仕事が上手くできず自信を失ったため」「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」といったネガティブな理由がほとんどだ。そして、そのほとんどは採用時のミスマッチに起因すると考えられる。

今回の新型コロナウイルスの影響で、企業と学生の相互理解の場が減り、ミスマッチが拡大するおそれがある。先の見えない状況だが、こうした時こそ、学生は主体的な情報収集や企業分析を行うことが重要になる。

また、企業には円滑なITの活用と、就活生への迅速かつ丁寧な情報発信を期待したい。3年後、こうした懸念が杞憂だったと思い返す未来を切に願う。

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