コロナで露呈した「日本経済の脆弱性」の根因 「危機への対応」でも中小企業の弱さが目立つ
さらに、小規模事業者が増えれば増えるほど、その国の生産性が低くなるので、財政が圧迫されます。すると、小規模事業者が多い分だけダメージが大きいのに、それに対応するための予算が限られてしまうのです。
このように見ていくと、「中小企業は国の宝だ」という日本の「常識」が本当に正しいのか、疑問に思えてきます。私は、今回のコロナ危機で日本の産業構造の弱さが露呈したと考えており、その原因は中小企業にあると見ています。
今回は、かつて「日本の宝」だった中小企業が、なぜ産業構造の弱さの原因といえるのかを解説していきます。
中小企業の価値は「人をムダに使う」ことにある
日本では、中小企業がやたらと大事にされています。「中小企業は国の宝だ」「日本の技術を守っているのは中小企業だ」という声を聞くことも少なくありません。
確かに、そういう一面もないことはないでしょう。一般的に、中小企業は大企業より顧客との距離感が近く、また、意思決定が早く、身動きがとりやすいのは確かです。
一方、中小企業は規模が小さくなるほど、人力に頼る傾向が強くなります。従業員が少なく、分業ができないので、専門性が高まらず、機械化もなかなか進みません。その結果、効率化が進まないので、その分、余計に労働力が必要になるのです。だからこそ、生産性が低いのです。
人口が増加し、労働力があふれている時代には、中小企業の存在は貴重です。なぜならば、中小企業は人間により多く依存する「労働集約型」で、ある意味、人をムダにたくさん使ってくれるからです。
中小企業自体の労働生産性が低くても、これらの企業が雇用を増やし、就業率が高まれば、国の全体の生産性も高まります。その意味では、中小企業の存在も生産性の向上に貢献していたと言えるのです。
生産性とは、GDPを総人口で割ったものです(生産性=GDP/総人口)。また、労働生産性とはGDPを就労人数で割ったものです(労働生産性=GDP/就労人数)。ここから、生産性は労働生産性に労働参加率をかけた値であることがわかります。
=GDP/総人口
=(GDP/就労人数)×(就労人数/総人口)
=労働生産性×労働参加率
この式からは、生産性を高めるためには「労働生産性」を高めるか、「労働参加率」を高めればいいことがわかります。
例えばある国の労働生産性が1000万円で、労働参加率が50%であれば、国全体の生産性は500万円です。この国で中小企業がたくさん生まれ、それらの企業が雇用を増やした結果、労働参加率が60%まで高まったとしましょう。すると、労働生産性がまったく伸びなかったとしても、生産性は500万円から600万円に上がるのです。
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