接触8割減を願う人々を失望させる「人の動き」 若者、老人が街から消えても通勤電車は混雑

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いずれの調査からも、外出を自粛しない行動をとっているのは、若者ではなく高齢者のほうだという結果が浮き彫りになっています。3月末のあたりは「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる巣鴨地蔵通り商店街も、人通り絶えない日常と変わらない様子が報じられていました。

若者VS.高齢者の対立は鎮静化

こうした若者と高齢者がお互いを批判しあう状況は、4月に入りかなり鎮静化してきました。「メディア同士で対立や分断を煽っている?」「TVの高齢者VS若者みたいな悪意を感じるインタビューの編集が怖い」と、煽るメディアに辟易するといった声も少なくありませんでしたが、そういった世論の高まりというより、若者も高齢者もここにきて外出しなくなってきたのです。

渋谷のスクランブル交差点をはじめ繁華街を歩く若者もだいぶ減ってきました。若者の感染者数が増えていることもあって警戒感が増したのかもしれません。

また巣鴨でも同様の光景が見られます。地蔵通り商店街で店舗を構えるAさん(76歳)は、「例年よりも5割ほど人出が減ったね」と、外出控えの実感を漏らしていました。通りを歩いていた女性(85歳)も、「万が一、うつっちゃうといけないから買い物を週に2回から1回に減らした」とのこと。

「お願いベースでこんなにも行動が変わるということは、ほかの国ではあり得ないと思います」という識者の声を待つまでもなく、確かに日本人が同調しやすい国民性を持っていることは間違いありません。

行動経済学で「同調効果」と呼ばれる心理現象がありますが、これは「人は一般的にほかの人と同じ行動をとっていれば安心する」という心理を表す現象で、多くの人が行動するのと同じように自分も行動しがちになる傾向のことをいいます。「規範性」の高い日本人はこの同調効果が働きやすいのです。

今までは外出自粛要請が出ていても、テレビで賑やかな繁華街の映像を観ることで、「ほかの人も外出しているから」といった同調圧力が働いていました。しかしここのところ、メディアに映るのは閑散とした都心部の映像。これで逆の同調圧力が働き、「みんなが外出を自粛しているんだし、自分も自粛しよう」という流れができてきたのでしょう。

4月3日、ミュージシャンの星野源さんがインスタグラムに『うちで踊ろう』というタイトルの楽曲をアップ。この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねる著名人が続出しています。こうした動きもステイホームへの同調効果を加速させています。

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