「休業補償」東京都が踏み出しても国が慎重な訳 膨大な財政措置が必要、不正受給招く恐れも
[東京 10日 ロイター] - 東京都は10日、新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を受け、ネットカフェやパチンコ店など休業指定業種を公表した。休業事業者には「感染拡大防止協力金」の名目で補償を行う。他の自治体も休業要請に伴う補償に国の支援を求めているが、政府は慎重姿勢を崩していない。すでに外出自粛で打撃を受けている飲食・小売業は資金力も弱く、支援が手遅れとなれば雇用問題につながる可能性もある。政府は7日に緊急経済対策を打ち出したが、次の対策を求める声が早くも出てきている。
知事会の要請、膨大な財政措置必要に
東京都の小池百合子知事は国が緊急事態宣言を発令した7日時点で、できるだけ幅広い業種に休業を求め公表する方針だったが、国が経済活動などへの影響を理由に難色を示し、発表が10日にずれ込んだ。
都の補償支給を受けて、今後は他の道府県の動向が焦点となってくる。全国知事会が8日に行った緊急対策本部では、休業補償の必要性を訴える声が上がり、店舗閉鎖やイベント自粛で事業者が負った損失の補償を国に求めることなどを提言することを決めた。
千葉県の森田健作知事は「都と足並みをそろえるというのは簡単だが、都と千葉県の財政には雲泥の差がある」と述べ、休業要請に伴う支援は国のサポートが不可欠との認識を示している。
休業要請の見返りとなる事業者への補償について、国は慎重姿勢を維持している。対象の線引きが難しく、不正受給の可能性があるうえ、財政負担が巨額になるのは必至なためだ。
安倍晋三首相は7日の衆院議院運営委員会で「そこ(飲食店)に納入している人たちも、大きな影響を受ける。自粛要請している人に限って、その額を補償するのはバランスを欠く」と答弁。飲食店に補償しても、納入業者は補償されず、バランスを失するとの考えを示している。
民間エコノミストの間でも「休業補償が本来必要だが、莫大な財政が必要なうえ不正受給の可能性がある」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミスト)として一定の理解を示す声もある。