「休業補償」東京都が踏み出しても国が慎重な訳 膨大な財政措置が必要、不正受給招く恐れも

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政府は、休業補償に代わり、資金繰りの悪化が懸念される中小企業に対し、地方銀行や信用金庫など民間金融機関経由でも無利子・無担保融資を実施することを決め、事業継続に向けた給付金の創設も打ち出している。売り上げが前年比50%以上減少した中堅中小企業は最大200万円、フリーランスを含めた個人事業主は最大100万円補填される。

ただ、政府の中堅・中小企業や個人事業主・フリーランス向け給付金は、売り上げ半減の証明など手続きが煩雑で、支給は最短で5月中以降が見込まれている。

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「法人企業統計などを参考にすると、小売業の手元流動性は売り上げの1カ月分、飲食業は1.5カ月分。休業には1カ月から1.5カ月しか耐えられない。休業補償がないと存続が難しい」と指摘する。

追加対策求める声

菅義偉官房長官は8日、休業要請とセットでの補償の必要性について「直接の自粛要請の対象となっていない分野でも発注が減るなどの影響がある」とし、「むしろ事業者の資金繰りを徹底的に支援し、収入が大幅に減少した事業者を幅広く給付金の対象とすることで、事業の継続を支援していきたい」と政府の考え方を説明した。

これに対し、国民民主党の玉木雄一郎代表は、経済対策は事業規模108兆円をうたいながら、現金給付は6兆円にとどまっているとして「衣ばかり大きな天ぷら」と批判し続けている。政府内でも「有事と平時を混乱した議論がみられ、支給が届いたときには企業の香典になっている恐れがある」(経済官庁)との懸念が出ている。

公明党の山口那津男代表は9日の中央幹事会で、緊急事態宣言の発令を踏まえ「必要な対応策もこれから考えていかなければならない」と述べ、追加の経済対策が必要だとの認識を示した。自民党内でも、窮乏する事業者救済のため「粗利補償は必要不可欠」との声が青山繁晴参院議員らから提案されている。青山氏は8日、岡田直樹官房副長官に次の経済対策に盛り込むための提言書を手渡した。

(竹本能文、(編集:石田仁志)

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