「このようにして業務を継続し、顧客の個人投資家と機関投資家に流動性を提供し続けることは賢明な決断であり、世界屈指のマーケットメーカーという当社の立場に見合った判断と考える」。シタデル・セキュリティーズの広報担当者は7日付の声明でこう述べた。
だが近隣住民からは、同社の試みを問題視する声もあがっている。同様のホテルが営業停止となる中で、ニューヨークとシカゴのオフィスから何十人もの従業員を(しかも一部家族同伴で)スタッフによるサービスが行われているホテルに滞在させることの、どこが賢明なのか、という声だ。
一般市民はバスにも乗れないというのに
フォーシーズンズの向かいに住むデビッド・カンプは、矛盾を感じずにはいられない。パンデミックを乗り越えるために一般の人々が不都合を強いられているときに、トレーダーが5つ星のリゾートホテルで快適に仕事するのはおかしいというわけだ。シタデル・セキュリティーズはさらに、コネチカット州グリニッジの高級住宅地にあるオフィスにもトレーダーを移動させている。
「街角では公共のバスが乗客を乗せることもなくバス停で停車している。トレーダーほど幸運でない人たちは、バスにすら乗っていないんだ。その一方で(フォーシーズンズで)あのようなことが起こっているとは、まったく残念だよ」とカンプ。同氏は景観設計会社を経営している。
シタデル・セキュリティーズがフォーシーズンズに臨時のトレーディング・フロアを構えたという話がアメリカの通信社ブルームバーグに続いて、地元のマイアミ・ヘラルド紙の報道で伝わると、パームビーチの自治体には「懸念の声」がいくつも寄せられた。同自治体は7日、ウェブサイトを更新し、こう述べた。
「条例違反についてフォーシーズンズにいくつかの問い合わせを行ったところだが、現時点では明白な違反行為は確認できていない」
パームビーチでは砂浜が封鎖され、ホテルとの境界線にはオレンジ色のコーンが置かれている。前週末には、ホテルのきれいに手入れされた緑色のクレイコートで宿泊客がテニスを楽しんでいた。音楽が鳴り響いているのが聞こえることもあった。
フォーシーズンズの広報担当者、ローリー・ヘリック氏の声明によれば、宿泊客に対する「サービスは縮小されている」。テイクアウトとルームサービスの利用は可能だが、レストランは閉まっているという。
「当ホテルは施設内全員の健康と安全、満足度を確保するために、さまざまな予防措置を講じている」とヘリックは話す。従業員は対面でのやりとりを減らすため、社会的距離を保つ訓練を受けているとのことだ。