「その時点で、何らかの変更が行われる場合は、どのような影響があろうと、実際にそれを促進するのは私たちになるのだろうと私は言った」と、バス運転手のマイケル・エンリケスは振り返る。
3月末までには、ウイルスは政府機関の職員にも及んだ。3月24日、MTAの関係者は52人の交通機関職員が感染していたと発表。一週間後、その数は333人に急増し、7人の職員が死亡した。
友人が亡くなった3日後に感染判明
発症した職員の数は公式に発表された数よりも実際には多いとみられているが、当局はその特定に奮闘していた。MTAは、職員が検査結果で陽性の旨を報告した際に、自主隔離すべきかどうかについてガイダンスを受けられるホットラインも設置。しかし、1日あたり7000〜8000件の問い合わせが殺到してしまったため、中には電話が通じるまでに数日かかった職員もいたという。
広報担当者によると、MTAはクレームに対応し、ホットラインに割り当てられた職員の数を50人から200人に増やした。現在、95%の通話に応答し、電話の平均待ち時間は約1分になったという。
MTAは当初、職員が濃厚接触した可能性のある感染職員について通知ができていなかったため、職員は自ら情報を共有するためにFacebookグループに頼っていた。そして、ニューヨークでのパンデミックが2カ月目に突入したときには、病気や死亡例を報告する複数の投稿が毎日のように溢れていた。
「私たちは同僚の多くが病気になったり、亡くなったりしているのを見ている。職員の士気は下がっています。本当に最悪の状況だ」とバスの運転手であるナサール・アブドゥルラーマンは言う。3月末には、彼がバス車両基地を共にした同僚のアーネスト・ヘルナンデスがウイルスで死亡した。
ある列車のターミナルでは、列車の配車係全員が感染し、監督者が代理を務めなければならなくなった。職員の中には、個人的な有給を消化してでも出勤を控えている者もいる。
3年間MTAに勤務していたバス運転手のダニエル・クルスは、3月29日、コロナウイルスの検査で陽性反応が出た。これは友人で同僚のオリバー・サイラスがウイルスで死亡したことを知らされてから3日後のことであった。
「自分の仕事を愛しているが、職場に戻るのが楽しみではない。自分の身は自分で守るようにと突き放されたような気がしている」とクルスは言う。「現時点では、ウイルスを運んでいるだけだ」。
(執筆:Christina Goldbaum記者)
(C)2020 The New York Times News Services
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