ニューヨーク・タイムズ誌の調べでは、異議申し立て2件に対する経営陣の回答によると、一部の職員は自分のマスクを着用した際、制服の規定に違反したため、マスクを外すように促されたという。
3月5日の会議では、ウタノ会長とほかの首脳陣は、MTAのすべての職員にマスクを提供し、画面タッチを必要とする出席システムの使用を停止することで、従業員間のパニック拡大を緩和するようにと強く指示した。
社会的距離措置を取るのも遅かった
バスの運転手であるロナルド・スプリングは、「この状況に対応するためのシステムが整っているはずだ。こういった危機の中でも、外に出て公衆に役立つための設備を持っているだろう。しかし、それが本来あるべき状態で行われているのを見ることはなかった」と話す。
MTAの2012年の計画では、パンデミックが宣言され次第、政府機関は第一線で働く職員間の直接の接触を制限するべきであると述べている。
MTAの関係者は、パンデミック計画は段階的なマニュアルではなく、指針となる枠組みであると述べた。しかし、ウイルスがニューヨークに到達してからほぼ1カ月後まで、当局は計画の多くを実行しなかったと職員は報告している。
MTA最高安全責任者であるウォーレンは声明で、「この計画には適切な資源の備蓄をすることが含まれている」と述べ、「今回のウイルスのパンデミックにおける医療指導は、すべての職員には特定の備蓄品を使用しないことだった」と、健康な人のマスク着用を避けるようにとしたCDCの最初のガイダンスに言及した。
しかし、マスクをめぐる論争は職員間では数ある懸念のひとつにすぎなかった。乗組員室や信号塔は肩がぶつかり合うほどに密度が高く、バス路線ではソーシャルディスタンス(社会的距離)の規定は数週間取り入れられなかった。
そこで、バスの運転手は自らバスの前方をテープで封鎖し、乗客に後部ドアから入るように指示し始めた。この戦略は、後にMTAが正式に採用した。一方、地下鉄では、自家製の漂白剤と水溶液をスプレーボトルに入れて電車のブースを掃除する職員もいた。列車は走り終えるたびに交代で新しい職員が入る。