日本の「雇用調整助成金」は支給まで遅すぎる

労働者を守るドイツの迅速な支給制度に学べ

このように失業対策として期待される雇用調整助成金だが、緊急経済対策が発表されて以降、「申請手続きが煩雑」「支給までに時間がかかる」「事業主が助成金を使わない」といった声が数多く聞かれる。

受給までの流れを整理すると、(1)労使間で休業協定書を締結する(※今回は特例で休業実施後の締結も可) → (2)休業を実施する → (3)休業実施の計画届を提出する(※今回は特例で休業実施後の提出も可) → (4)判定期間終了後(通常は直近3カ月、今回は直近1カ月)2ヵ月以内に助成金の支給申請をする → (5)申請内容を審査の後、概ね2カ月後に支給される、というものだ。

今回は特例で幾つかのステップを事後的に実施することが可能だが、企業が助成金を手にするには、休業期間が終了してから2カ月程度を要する。そもそも休業手当を支給し続けられるだけの手元資金を持たない企業は利用ができない。

申請に必要な書類を確認すると、(3)の時点で、①休業等実施計画届、②事業活動の状況に関する申出書、③雇用指標の状況に関する申出書、④休業計画一覧表、⑤休業協定書と労働者代表確認書類、⑥事業所の状況に関する書類。さらに(4)の時点で、⑦支給申請書、⑧助成額算定書、⑨休業実績一覧表及び所定外労働等の実施状況に関する申出書、⑩雇用調整助成金支給申請合意書、⑪支給要件確認申立書、⑫労働保険料に関する書類、⑬労働・休日の実績に関する書類と、実に10種類以上の書類が必要となる。

休業や労働の実態把握、不正受給の防止といった観点から、いずれも必要な書類とされているのだろうが、やはり煩雑な印象は拭えない。

リーマンショックで効果を上げたドイツの制度

筆者が調査対象とするドイツには、「クルツアルバイト」と呼ばれる類似の制度があり、リーマンショック後の世界的な金融危機時にドイツ経済が速やかに成長軌道に復帰した立役者として評価されている。同制度は、経済的事由など正当な理由のもとで企業が従業員の労働時間を短縮する場合、時短に伴う従業員の賃金減少分の6割を国が補填するものだ(扶養家族がいる場合は賃金減少の66.7%を補填)。

当時のドイツは主要先進国中で最も厳しい景気後退に陥った国の1つだったが、同制度の積極活用で解雇を抑制したことで、家計の雇用不安が軽減され、企業は有能な人材をつなぎ留めることに成功し、その後の速やかな事業活動の再開が可能になった。オーストリア、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、スイスなど多くの欧州諸国にも類似の制度があり、今回のコロナ危機対応で新たに制度を導入する国もある。

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