社員30人の会社が下請けにならずに戦える理由 昭和測器の「人を幸せにする経営」とは何か

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そうした同社が創業以来、守っているのが、お客さまを大切にして、たった1台でも需要がある限りは製品を廃番にしないことだ。その結果、同社の製品は驚くほど多品種少量になっている。年間たった10台、1カ月にわずか1台程度しか売れない製品であっても、需要があればつくり続けているのだという。

こうしたニッチな需要にこだわる姿勢が、結果的に下請けとなることを拒み、本業を究めて、先を見越したニーズの掘り起こしと技術開発に結びついている。

ちなみに、同社の売上比率は汎用品が60%、お客さまからの特注品が40%になっている。汎用品で最低限の売上高を確保し、特注品でお客さまからの要望に応える。そしてそこから自社開発の新製品のヒントを得るという、非常にいい循環の仕組みをつくりあげているのだ。

全社をあげた開発体制が特徴

昭和測器がいかに研究開発に重きを置いているかは、売り上げの半分を、人件費を含めた研究開発費に投じていることからもわかる。技術者は、全従業員のうち6割を占めている。

開発会議は毎月1回開かれており、開発だけでなく、営業、製造も参加する。開発・営業・製造が三位一体となった開発会議を毎月行っているのだ。

驚いたことに、この会議には事務の女性社員も出席している。その理由について、創業者である鵜飼俊吾会長はこう語っている。

「お客さまからこんな苦情が来ましたということを、女性事務員が言ってくれるんですよ。生の声を知らせてくれる彼女たちも、立派な開発者の一員です」

鵜飼会長の経営理念の根幹になっているのは「会社は全社員の幸せを満たす運命共同体」という発想である。もちろん事務職の社員も運命共同体の一員だから、共同体の一員の声を聞かずに、商品開発をするわけにはいかない。全社をあげた開発体制が、この会社の特徴なのだ。

また同社では、開発が営業に異動したり、営業が製造に行ったりといったローテーション人事がさかんに行われている。業務命令で頻繁に人事異動する会社もあるが、同社の場合は、あくまでも個人の希望での異動だという。

「営業でお客先に行くに当たって、製造のことを知っておきたいから」とか「お客さまの声をじかに聞いて開発に生かしたいから」といった社員の自発的な希望で、そうしたローテーションが活発に行われているのだ。

同社は年に1つは、必ず新製品を生み出しているという。その驚異的な開発力は、全社員一丸となって知恵と力を出し合い、新しい製品を生み出していくのだという熱い想いと無縁ではない。

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