原油価格は再び「大暴落」してしまうのか? 鍵を握るのは「サウジ」でも「ロシア」でもない
トランプ大統領の見立てどおり、日量1000万から1500万バレルの減産が実現するのであれば、少なくとも1バレル=20ドル台という価格は、割安と考えてよいだろう。市場は往々にして行き過ぎた反応を示すことを考えれば、40ドル台まで一気に値を戻すことがあっても、何ら不思議ではない。
一方で今回も産油国間で意見が対立、減産合意に失敗することがあれば、失望感も加わってまさかの10ドル台前半や、さらに10ドル割れをうかがうまで一気に値を崩す展開になる懸念も消えない。産油国にとって、今が価格下落の流れを断ち切る最後のチャンスとなるかもしれない中、はたして彼らは大幅な減産でまとまることができるのだろうか。
鍵を握るのはサウジでもロシアでもなく、アメリカ
こうした状況下で大きな鍵を握るのは、サウジでもロシアでもなく、アメリカの動向だ。サウジやロシアは現時点では価格下落を受け入れても、世界市場における生産シェアを広げることに重点を置いていると思われる。
だが、需要が低迷している今の状況で、いくら「バーゲンセール」を行ってもシェアを広げる余地はたかが知れている。サウジは一時期日量900万バレル台後半まで落ち込んだ生産量を、1200万バレルまで引き上げる意向を示しているが、それでも生産は約30%しか増加しないし、今の状況下ではそれを実現することが出来るだけの需要は存在しない。
それよりも大幅な減産で合意し価格を大幅に引き上げる方が、石油収入も増加することになる。日量1000万バレルの減産は、現在の世界全体の生産量の約10%に相当するが、それによって価格を1.5倍から2倍にまで引き上げることができるなら、御の字ということになる。こうした単純な計算をするだけでも、現時点では減産で合意するのが産油国にとってベストの選択肢なのは明らかだ。
にもかかわらず、産油国がなかなか減産でまとまることが出来ないのは、今やサウジやロシアよりも生産量が多くなっているアメリカが減産に応じないことが背景にある。今回もトランプ大統領が減産を呼び掛けたにもかかわらず、アメリカ政府は「民間に生産削減を命令する権限はない」との立場を示しており、減産には消極的だ。一方でサウジやロシアは、アメリカやカナダ、メキシコやブラジルなども参加することを減産合意の前提としており、両者の溝は簡単には埋まりそうにない。
もちろん世界最大の産油国となったアメリカも、価格下落の影響は免れることはできない。1日には中堅どころのシェールオイル業者のホワイティング・ペトロリアムが米連邦破産法11条の適用を申請、経営破綻している。今後も破綻が相次げば、信用収縮が進んでいる社債市場、特にハイイールド債市場の信用不安につながる恐れは高く、それがさらなる株価の急落をもたらすことも十分にあり得る。
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