原油価格は再び「大暴落」してしまうのか? 鍵を握るのは「サウジ」でも「ロシア」でもない
トランプ大統領もこうした事態を重くみている。3日にはアメリカの石油大手企業のトップとの会合を行ったが、自主的な減産を要請するのかと思いきや、出てきたのは必要ならば関税を賦課しても国内の石油企業を保護するという方針だった。これでは他の産油国の反発を招き、減産合意をさらに難しくさせることになりそうだ。
また今回のシェール業者の破綻も、すぐに生産減少につながるわけではないことにも注意が必要だ。破産法が適用されれば、債権者の権益を少しでも確保するため、逆に生産を能力一杯にまで引き上げ、石油収入を得ようとする可能性は高いと考える。
サウジやロシアはもともとアメリカの減産には期待しておらず、今回の増産方針も自分たちよりも生産コストの高いシェールオイル業者を採算割れに追い込み、破綻させるのが主な目的だったと言っても過言ではない。3日に発表されたベイカーヒューズ社のリポートによると、アメリカ国内の原油の稼働リグ(掘削機)の数は、前週から62基と大幅に減少した。
3月13日時点で683基あったのから、この3週間で121基、18%も減少している。こうしたリグの減少には、まだ生産の行われていない、試し掘りのものも含まれており、すぐに生産の減少につながるとは限らない。だが、今の状況を見る限りでは、意外に早く生産が落ち込んでくることも考えられる。
最後まで読めないトランプ大統領の行動
恐らくサウジやロシアはアメリカのシェール業者が破綻し、生産が大幅に落ち込んだのを確認してから、一転して大幅な減産の方向に方針を切り替え、一気に価格を押し上げる腹積もりだったのだろう。
だが、今回トランプ大統領からの両国への働きかけがあったので、ひとまずそれに乗っかったというのが実際のところではないか。
アメリカが減産に参加するのであれば、それに越したことはないし、結局生産を減らさないというのであれば、計画を粛々と進めるだけの話だというわけだ。いずれにせよ、アメリカの生産が大幅に減少し始めたあたりが、当面の底値になることに変わりはないと思われる。
今のところ、当初は6日に行われるとされていたOPECプラスの緊急総会が、参加国の調整に手間取っているとの理由などから9日に開かれる見通しだ。ここまでの価格急落を巡り、サウジとロシアがお互いにその責任が相手方にあると非難するなど、両国の関係もやはり良好というわけではないようだ。
もちろん、ここまでの価格下落で危機感が高まっているのは間違いないし、アメリカが参加するのであれば大幅減産で合意する可能性は十分に高いと思われるが、一番大きな問題はトランプ大統領の行動が最後の最後まで読めないということだろう。
大幅減産に期待して買いを仕掛けるか、合意失敗によって場合によっては10ドル台前半まで値を崩したところで、満を持して買い参入するか。トレーダーは大きな選択を迫られている。株式など他の市場にも影響を及ぼす可能性がある。
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