似鳥会長は「不況になれば建築費は半分になり、既存物件も手に入りやすくなる。来年から再来年にかけて投資が安く済む」と語る。似鳥会長の強気発言と、このタイミングでの増収増益計画の発表の裏には、過去の経験に基づく自信が垣間見える。
北海道を地盤としていたニトリが本州での出店を始めたのは、バブル崩壊後に不動産価格が急落した1990年代半ば。リーマンショックが起きた2008年には同業他社に先駆けて、5月から定番商品の値下げに踏み切った。その後2年間は3カ月ごとに値下げ対象商品を拡充。不動産を安く仕込んで出店にもアクセルを踏み、国内家具市場での圧倒的首位を確立した。
2020年2月時点でのニトリの自己資本比率は82%。現預金も約1600億円と3年前比で倍以上に積み上がり、投資余力は十分だ。
今後は建築費が下落するタイミングをみて、保有する土地などに店舗を建設していく方針。さらに似鳥会長は「物流センターの土地や建物に投資するチャンスが来る」と強調する。ニトリは商品の輸入や配送に関わる物流業務の大部分を自社で行う。出店拡大と並行して物流センターの再配置や設備の増強を加速し、ECとの連携も見据えた物流体制の効率化を進める構えだ。
大規模な値下げは実施しない
一方、商品施策ではリーマンショック時に実施した大規模な値下げは行わないようだ。「リーマンショックのときは全体的に価格が下がりすぎて、安物が多いというイメージがついてしまった」(似鳥会長)。現状の価格を維持しながら各商品の品質・機能を高めるほか、家具とインテリア商品を組み合わせた売り場提案やECとの連携施策を強化するという。
不況下でニトリの競争力が高まることは間違いないが、感染症の拡大という未曾有の事態なだけに、今期の増収増益の達成に向けては懸念も残る。同社は商品の約9割を東南アジアや中国など海外で生産する。現状、サプライチェーンに大幅な遅延はないという。ただ、感染対策をめぐる各国政府の方針次第で、生産や輸送に影響が出る恐れもある。
また、ニトリが業績予想を公表した時点では、緊急事態宣言の対象となる地域や業種に関する情報が明らかになっていなかった。新生活需要で書き入れ時となる4~5月の販売への打撃が大きければ、会社の想定以上に売り上げが減少する可能性もある。
「リーマンショック以上の世界的大不況が起きる可能性がある。ピンチをチャンスに変える準備はしてきた」と断言した似鳥会長。国内の消費環境にかつてない危機的な状況が続く中、業界の盟主の胆力が試される。
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