緊急事態宣言に安倍首相「政権の命運」の賭け 小池都知事を牽制、経済対策に与党の不満も

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これまで「政治主導」を前面に打ち出し、重要政策決定などで「首相の政治決断」を連発してきたのが安倍政権だ。にもかかわらず、今回ばかりは「包囲網の中で、あえて慎重姿勢を隠さなかった」(自民幹部)のは事実。これについて首相周辺は「宣言は最後の手段だが、法的強制力に欠けるため、実効性をあげる環境整備が必要だった」(側近)と漏らす。

たしかに、緊急事態宣言が出ても、欧米各国のように罰則を伴う外出禁止措置などは不可能だ。宣言に伴うほとんどの対策は要請レベルにとどまり、すでに各知事らが呼び掛けている外出自粛要請と本質的に変わらないことになる。

緊急事態宣言によって国民の自粛ムードを一段と加速させれば、「経済への悪影響は計り知れない」(有力閣僚)。経営難に追い込まれた中小企業や自営業者への補償問題も政府に重くのしかかる。

宣言のタイミングを慎重に見極め

政権の柱として首相を支える麻生太郎副総理兼財務相や菅義偉官房長官も、「(緊急事態宣言に)一貫して慎重姿勢を維持していた」(官邸筋)とされる。だからこそ安倍首相も「躊躇なく」と繰り返しながら、「マイナスを上回るプラス効果が期待できる宣言発令のタイミングを、慎重に見極めてきた」(同)のが実情だ。

東京五輪の延期を決めたときから、「突然、首相を差し置いてコロナ対策に走り出した」(都議会幹部)とされる小池都知事の言動に、「首相らは苛立ちを隠さなかった」(官邸筋)のも事実だ。

その一方で、小池氏を先頭にした首相包囲網が、緊急事態宣言を決断するきっかけになったとも言える。宣言発令を表明した後の6日夕、安倍首相が「諸外国のような都市封鎖(ロックダウン)はできないし、する必要もないと専門家も言っている」と力説してみせたのも、小池氏への牽制とみられている。

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