「土日を趣味に捧げる人」が結婚するための視点 30歳でスノボにはまった人の本気婚活の結末

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半年後、スノーボードのシーズンを迎え、2人は一緒に滑りに行く機会が増えた。3月には2人きりで泊まりがけで行くことに。ただし、宿泊先のビジネスホテルはシングルの部屋を2つ予約した。

「彼から『付き合おう』と言ってもらい、私も軽く『いいよ』と受け入れることができました。そのときには彼のことが好きになっていたのだと思います。ちゃんと知り合ってからの期間は短いのですが、一緒にいた時間は長いので、彼の真面目な人柄もわかっていました。

スノーボードは性格が出ます。みんなで滑っているときに勝手にどんどん先に行ってしまう人もいれば、いちばん後ろからみんなの様子をちゃんと見ながら滑る人もいるんです」

もちろん、貴文さんは後者である。とにかくスノーボードを愛しており、そのあふれる愛情をスノーボーダーすべてに注いでいるような人物なのだ。それゆえに偏りもある。

「私の前に付き合っていたのはスノボをしない女性だったそうです。ならば滑りに行く回数を減らしたの?と聞いたら、当然のように『いや、全然』と答えました。ダメだな、この人。完全にスノボバカだと思いました(笑)」

捨てられないものは人それぞれ

貴文さんの職業は公務員であり、恵さんによれば「真面目には働いているようだけど出世コースでは明らかにない」。休日のほぼすべてをスノーボードに使うことができればご機嫌で、いつもニコニコしているという。

「私は根暗でいろんなことを気にしてしまうので、彼みたいになりたいなと思っています」

貴文さんのほうは恵さんのどこを気に入ったのだろうか。それもやはり彼女がスノーボードと向き合っている姿だった。ゲレンデにいるだけではしゃいでいる恵さん、向上心があって上手に滑れないと本気で悔しがる恵さん。自分と深いところで共通する何かを感じたのだろう。

結婚とは生活そのものだ。他人同士が出会って結ばれて家庭を築くためには、自分が大事にしてきたものを取捨選択する必要がある。どうしても捨てられないものは人それぞれで、しかも捨てる体験をするまではわからないことが少なくない。

筆者の場合は、アイデンティティーだと思っていた地域から、結婚を機に愛知県に引っ越したが、とくに問題はなかった。今では、日本語が通じて電車の駅がある場所ならばどこにでも住めると感じている。ただし、配偶者が飲食好きであることは欠かせない。一緒に飲食を楽しめないと上機嫌を確保できないからだ。

恵さんと貴文さんの場合は、捨てられないものがスノーボードであることは明らかだろう。それさえあれば自分が機嫌よくいられるものをしっかり把握できれば、結婚相手は意外な場所で見つかるのかもしれない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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