インフルエンザ関連の緊急処置室の来訪が増えた割合は、地区によって大きく異なる。データによれば、ニューヨーク市の標準的な世帯収入が約6万ドル(約650万円)だが、これを下回る地区で来訪者の割合が急増している。
アメリカ国勢調査局によると、例えば、クイーンズ地区コロナの平均世帯収入は約4万8000ドル(約520万円)。コロナは、ビル・デブラシオ市長が市内で最も影響を受けていると述べているエルムハースト病院の近くだ。患者が殺到している緊急処置室で働く医師たちは、「終末世界的」な状況と表現している。
マンハッタンにあるコロンビア大学の疫学者ジェシカ・ジャストマン医師は、これらの数字について、多くの移民や低所得者層が小さな共同住宅に大家族で住んでおり、家庭で隔離できないことが原因である可能性が高いとしている。「残念ながら、状況がどれだけ壊滅的になりうるかを示していると思う」とジャストマン医師は語る。
インフル症状が出ている人の9割はコロナ
ニューヨークで、インフルエンザに似た症状があり、緊急救命室を訪れる人々の圧倒的多数が、たぶん新型コロナウイルスに感染している、と専門家たちは見る。
「実際、こうした症状のすべてがコロナウイルスなので、私たちはインフルエンザの検査をやめました」と、ノース・ショア・ユニバーシティ病院感染症の責任者、ブルース・ファーバー氏は話す。同氏はまた、国内23の病院のネットワーク、ノースウェル・ヘルスの一員でもある。「現時点では、インフルエンザのような症状が出ている人々の9割が、ほぼ間違いなくコロナウイルスだろう」。
インフルエンザに似た症状がある患者が最も増加していて救急救命室の多くは、クイーンズにある。同地区では、最多数のコロナウイルス感染者が確認されている。クイーンズの居住者10万人あたりおよそ616人、ブロンクスでは居住者10万人あたり584人の感染者が確認されている。これは、マンハッタン(同376人)、ブルックリン(同453人)と比べてはるかに多い。
上記の4つにスタテン島を加えた全5行政区での感染者数を合わせると、ニューヨーク市は、アメリカのどの都市よりも感染人数がはるかに多い。
救急救命室のデータには、入院患者数も記録されている。つまり、救急救命室を訪れて、結局入院して治療を受けることになった患者数だ。その数値からして、高齢の患者の方が若年の患者より 入院する可能性がはるかに高いことが、データでは明らかになっている。