日本の「医療崩壊」現実に起こりえる危機的状況 医療従事者の負担増大、患者受け入れに不安

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もし日本で欧州並みの大流行が発生し、さらに「都市封鎖」(ロックダウン)に類する措置などが講じられなかった場合、どのような事態が起きるのか。政府の感染症対策専門家会議は、永寿総合病院で集団感染が発生する3週間前の3月上旬に予測を出している。

比較的感染が抑制されているドイツの状況を前提とした場合でも、流行発生から50日目には1日100人に5人以上の割合で感染、最終的には8割近い人が感染するとした。流行62日目には100人に1人が重篤化し、現有の人工呼吸器の数を超えてしまうことが想定されるとしている。

コロナ以外の患者をどうするのか

東京都はピーク時に備え、入院治療が必要な重篤・重症・中症者向けベッドを4000床確保するとしている。「これまでに約1000床を確保しており、医療体制は確保されている」(東京都)としているが、まだ大きな開きがある。

首都圏の感染症指定病院のある医師は「すぐに対応は難しい」と話す。「感染症である以上、空気が外部に漏れないよう(室内の気圧を下げた)陰圧室を用意したり、個室あるいはフロア全体をコロナ病棟に利用しなければ院内感染が起こる。今入院している患者の移動も必要になる」と語る。

都内の別の大規模病院は、重症患者を中心に受け入れが可能か、シミュレーションを行なっている。それでも、新型コロナ以外の患者をどうするのか、難しい選択を迫られている。病院関係者は「他の疾患の重症患者もおり、高度医療の提供が必要であるため、バランスをみて決定する」と語った。

いずれの関係者も、医療機関の対応については口止めされているとして匿名を条件にロイターに語った。

こうした中、厚生労働省は3日、軽症や無症状の感染者に宿泊施設や自宅で療養してもらうようガイドラインを示した。これを受けて東京の台場で「船の科学館」を運営する日本財団は、軽症者滞在用に4月末までに1200床分、7月末には9000人分の施設を提供すると申し出た。全国で400以上のホテルを展開するアパホテルも、客室の提供に名乗りを上げている。

しかし、これらはあくまで軽症者向け。軽症者が医療機関にあふれないようにするという面では効果があるかもしれないが、重症・中症状向けの病床問題が解消されないことに変わりない。

ある都立病院の医師は、10―20人程度の重症患者を受け入れざるを得なくなった場合、廊下などのオープンスペースで患者を診るという状態になれば、医療従事者の安全を守ることができず、院内感染は避けられないと話した。

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