日経平均は緊急事態宣言が出れば反発するのか 「アベノミクス相場」継続か終焉かの重要局面

拡大
縮小

新型コロナ感染状況が最有力材料で、いまのところ理屈が通用しない相場だが、落ち着いてくれば理屈は必ず生きてくるはずだ。

先週の指標を見てみると、4月1日の日銀短観は大企業製造業DIが「マイナス8」という厳しさだったが、覚悟をしていた市場の反応は限定的だった。逆に中国の国家統計局3月の製造業PMIは予想以上のV字回復で好調不調の境である50台を超え、翌日の財新製造業PMIも同じく50を超えた。ただ中国の回復を信じないのか、反応は鈍かった。

一方、需給を見ると、4月に入ってから2度の日銀ETF(上場投資信託)買いは1202億円で、3月後半の2004憶円から減少している。需給にはマイナスだが、2004憶円の緊急事態は過ぎたのかと、逆に安心感も出ていた。

雇用が最も重要なことは共通の見方だが、アメリカの3月28日までの新規失業保険申請件数(季節調整済み)は、1週間で664万8000件に急増し、過去最多だったその前週の330万7000件から倍増したが、こちらも覚悟していた市場への材料としては限定的だった。また3日の3月雇用統計(非農業部門雇用者数)は予想を大きく下回り70万1000人減、失業率は4.4%と大きく上昇、平均時給も前年比+3.1%(予想+3.0%)だったが、NYダウは直後550ドル安までの反応だった(終値は360ドル安)。

「業績先取りの動き」はまだ先

さらに3月ISM 非製造業景況指数は52.5と、2月の57.3から低下したものの、予想外に昨年10年1月から続いている50台を維持したが、好材料とはならなかった。

企業業績は下方修正が連発され、2019年度の日経平均予想EPS(1株あたり利益)は1500円を切ってきた。続く2020年4-6月期も厳しく、良くて2020年7-9月期、場合によっては同10-12月期まで回復が遅れることも予想され、業績先取りの動きはもう少し後になりそうだ。

しかも、3月の数字は集計日が月半ばで、新型コロナの影響が完全に織り込まれていないと言われる。今週の予定では9日(木)の4月日銀さくらリポート、4月ミシガン大消費者態度指数などが注目される。まだ紆余曲折があるかもしれないが「1番怖いところが買い場」と言う相場の不変の真理を心に刻みつつ、対応して行きたい。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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