「ANAとJAL」コロナ禍で被る途方もない衝撃 大幅減便で資金減1000億円規模、今夏が分岐点

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市場全体のリスク回避的な動きや投機的な動きもあり要因の切り分けは難しいが、約1.6%の保証料率は計算上、「5年以内に破綻する可能性が10%程度織り込まれている」(荻野氏)水準を意味する。

JALとANAでは売上高の約9割が費用で、うち約半分が人件費や航空機のリース代などの固定費が占める。減便・運休で燃料代などの変動費は抑えられるが、固定費はかかる。

ANAの平常時の国際・国内線の収入は月平均で約1000億円。これまでの減便規模からすると1カ月分はすでに「蒸発」し、手元の流動性資金は3000億円程度に減っているもようだ。何も手当てせずこのまま同規模の減収が続けば、フリーキャッシュフローの赤字継続は不可避だ。まずは例年6月に実施する500億円前後の借り換えを4月に前倒しし、約1000億円の調達を銀行側と協議している。

ANA、JALそれぞれの昨年12月末時点での現預金は1268億円、2964億円、有価証券は2632億円、300億円。純有利子負債残高はANAが4581億円、JALが1562億円だが、関係者は「ここ数カ月で状況は様変わりしている」と話す。

分岐点は今夏

野村証券の荻野氏は「まずは書き入れ時の夏までに部分的にでも運航を再開し、その先の需要が戻る見通しを立てられるかどうか」が業績の先行きを占う上での分岐点になるとみている。

各社は手元のキャッシュ確保が喫緊の課題だが、コロナ終息後の需要拡大に備え、雇用は維持する。ANAは新人客室乗務員658人の入社時期を約1カ月先送りするほか、現役の客室乗務員約6400人を対象に毎月1人当たり3―5日程度、4月から一時帰休させる。旅客機「A380」の3号機納入も当初の4月から約半年延ばし、メンテナンス費用などを抑える。役員報酬や管理職賃金も減額する。JALも4―6月まで役員報酬10%を自主返上する。

2019年4―12月期の当期利益ベースでの進捗率はANAが92%、JALが82%と順調だったが、通期業績の下振れは避けられそうにない。通期予想は、ANAが15%減の940億円(リフィニティブ集計の予測平均値790億円)、JALは同38%減の930億円(同879億円)。

コロナ禍の終息時期が見通せない中、両社とも21年3月期予想を公表できない可能性もある。市場予想はANAが796億円、JALが711億円で、さらなる減益が想定されている。羽田空港の発着枠拡大に伴い、今年は国際線で多くの新規開設・増便も計画していたが、就航延期や運休・減便が相次ぎ、出鼻をくじかれたANAとJAL。コロナ終息までなんとか持ちこたえようとしている。

 

(白木真紀 取材協力:伊賀大記、新田裕貴 編集:平田紀之、田中志保)

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