雇用統計前に、再び強まる円安圧力 輸入増加で変わる、外為市場の「景色」

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3月31日、東京外為市場の年度末「景色」に変化が起きている。写真は都内のディーリングルームで18日撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 31日 ロイター] -東京外為市場の年度末「景色」に変化が起きている。これまで輸出勢のドル売りやリパトリエーション(本国への資金還流)が目立ち、円高が警戒されることが多かった。

しかし、足元では貿易赤字拡大にともなう輸入勢の増加で、ドル買い需要が多く、円安圧力がむしろ強まっている。米雇用統計を前に強まっているドル先高観を後押しすることになりそうだ。

年度末に進む円安

ドル/円は31日の外為市場で、2週間半ぶりに103円台に上昇した。円高が常に警戒されてきた、これまでの年度末の状況とは異なる動きをみせた。

超円高局面では輸出企業のドル売りに注目が向かい、月末のたびに、売り遅れている輸出企業が売りを出すかもしれないとの思惑を呼び、ドル/円の上値抑制要因の1つとなっていた。

しかし、ドル/円が大きく上昇した現在、輸出企業は余裕をもってドル売りを出せているという。年度末が近づいても、国内金融機関の関係者は、自動車大手のドル売り注文は観測されていなかったと話している。

超円高局面で輸出企業が拠点を海外に移転させたことも、ドル売り圧力の後退につながっているという。

りそな銀行・市場トレーディング室の尾股正寿シニアクライアントマネージャーは「一昔前なら3月はリパトリというか、決算がらみで外貨を円に換える動きがあったが、いまや、日本でモノを作って売っているビッグネームが非常に少なくなった。外で作ってどこかに売りに行くスタイルに変わった。このため大きなTTB(米ドルを円に換えるときに適用されるレート)のフローが本当になくなった」と話す。

日々「戦闘モード」の輸入勢

片や、貿易赤字基調を映し、輸入企業は日々「戦闘モード」だ。超円高局面ではドル/円の下落を待っていれば良かったが、現在では、連日、エネルギー関連企業のドル買いが観測されている。

各企業の近年の傾向として、年度末にリパトリを集中させるのではなく、必要に応じて早い段階で円転するようになっているという。

一方、安倍晋三内閣成立の少し前から始まった円安局面だが、未だに注文の出し方がシステム化されず、上手にドル買いできない企業が残っているとの声もある。ある邦銀の関係者によると、31日も102円後半で買わず、再度の下落を待っている向きがあったという。

ドル/円は米雇用統計の発表を前に先高観が再び強まっている。大手商社の財務部関係者は、米長期金利の上昇予想をもとに来年度にドル/円が110円を目指すとの見方を示す。

ドル/円の上値追い局面では、実需の買いが追いつかなかったり、押し目を待っている向きがドル買いを迫られる形で、上昇に拍車が掛かる可能性もある。

(和田崇彦 編集:伊賀大記)

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