政治家よ、あなた方はどこまで他人事なのか

東京都医師会長「まず医療現場を見に来い!」

呼吸を助けるために気管内挿管するが、この患者が新型コロナウイルスに感染していれば、医師も周囲の医療従事者も感染してしまう。着脱の手間がかかる防護服を着ていては、治療の効率が悪くなる。でも、感染してしまったら、医師や看護師という貴重な戦力を失うことになり、やがて病院は機能不全に陥る。救急現場は、そういったコロナウイルス対応でパニックに陥り、疲弊しきっているという声が、尾崎会長の元にも届いている

尾崎会長自身、午前中は東京都東久留米市にある内科循環器科クリニックで診療を続けているが、「緊張の連続だ」と打ち明ける。インフルエンザなら症状からほぼ断言できるが、新型コロナウイルスは見分けがつかない。気づいたら待合室で感染の疑いがある患者がずっと順番を待っていたこともある。もし自分の診療所から感染者が出れば、さらに感染を広めてしまうし、診療所も2週間は閉めざるをえない。自分も感染のリスクを背負うことになる。都内の医療機関は病院も診療所も、緊張の連続という状況にさらされているのに、政府の反応は鈍いように思える。

理解を示してくれる政治家はむしろ少数

医療体制を築くにも、都民に危機感を持ってもらうためにも、緊急事態宣言は必要だと尾崎会長は考えている。だが、現場の窮状を説明しても、理解を示してくれる政治家は、むしろ少数だ。「これ以上経済が落ち込むことは避けたい」と何度言われたことか。安倍晋三首相は3月28日の記者会見で「まだギリギリ持ちこたえている」と表現し、菅義偉官房長官も「現状ではまだ緊急事態宣言が必要な状態ではない」と否定した。新型頃内ウイルス対策の担当になった西村康稔経済再生相も緊急事態宣言には否定的だ。

東京都医師会の会長室でインタビューをしていた尾崎会長の声のトーンが上がってきたのは、この話に及んだときだ。「確かに経済は大切だ。でも、感染症に打ち勝たなかったら経済は成り立たないでしょ。経済のために宣言できないとしたら、悲しいことだよ」。そして、語気を強めてこう言い放った。

「現場からは、もう無理だ。何とかしてくれ、という声が上がってきている。こんなんじゃ、患者を救えないでしょ。緊急事態じゃないって言うなら、国会のなかで閉じこもっていないで現場を見に来いって言いたいよ!」

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