さらに、真水とカウントされる財政支出として、新型コロナウイルスへの対応として医療分野を中心に、政府の歳出が追加で5000億ドル規模増える。これら(家計への所得支援と政府による支出拡大)の2つに限定しても、1兆4000億ドルGDP比7%が最低限の真水ベースでの財政政策パッケージになる。
これに加えて、企業へも広範囲な財政支援が行われる。具体的には、法人税の税控除拡大などを通じた減税、社会保険料や税支払いの一時猶予などの措置である。税制変更を通じたサポートに加えて、経営危機に直面しているとみられる大手航空機会社や国防産業に対しては、政府による直接融資あるいは補助金支給のスキームもある。
これらの企業への財政支援は、約4000億ドル規模(GDP比約2%)に達すると見られるが、これらは融資としての側面が大きく、経済成長率を押し上げる真水はこの一部になる。もちろん、相当規模の資金支援によって企業の資金繰りが広範囲に改善されれば、経済の落ち込みを和らげる効果を持つ。
以上説明した、パッケージは幅広く経済の落ち込みに対応した、戦後最大規模の財政政策と位置づけられる。しかし、こうした対応に踏み切ったのは、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために、アメリカの主要都市で事実上の都市閉鎖を余儀なくされ、経済活動が相当規模で縮小する可能性が高いためだ。大規模な政府の財政支援が実現しても、経済活動の縮小がそれ以上であれば、不十分な政策対応にとどまる。
アメリカ株式市場は今後2番底をうかがう可能性が高い
それでは、どの程度の経済の大収縮が起こるのか。外食、旅行などの不要不急のサービス消費産業がアメリカの経済活動に占める割合は約7%である。
広範囲な都市閉鎖によって、これらの産業活動が70%程度縮小するリスクがあり、これだけで約5%規模の経済活動(需要)の蒸発が起きると試算される。波及効果等を踏まえると、経済の大収縮の規模としてこれは最低限の目安である。
こうした総需要と所得の大収縮が、アメリカでは都市閉鎖によって3月後半から始まっている。上記の財政政策が機能し始める4月以降、家計や企業の所得の落ち込みは一定程度相殺されるとみられる。ただ、財政政策による資金支援がすべて発動されるには時間がかかるし、また広範囲な経済活動の縮小を満遍なくカバーするには至らないだろう。新型コロナウイルス対応の急激な所得の落ち込みを和らげる「止血措置」として効果は期待できるが、アメリカ経済が4~6月に戦後最大規模で大幅なマイナス成長となるのは避けられないと筆者は予想している。
このため、2020年のアメリカ経済は、リーマンショック後の2009年と同規模あるいはそれ以上のマイナス成長になる可能性が高い。こうした筆者の見立てが正しく、リーマンショック直後と同様の落ち込みになれば、アメリカの企業利益の減益率は20~30%では済まないとみられる。
アメリカの株式市場はいったん、高値から30%以上急落した後大きく反発しているが、2020年の軽微な景気後退を織り込んだにすぎないように見える。今後、筆者が予想する、「より厳しい景気後退」を織り込む形で、アメリカ株式市場は今後2番底をうかがう可能性が高いと考えている。
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