日経平均が年末まで2万円超になると読む理由 下値リスクが残る時にどんな投資をすべきか

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他にも、リーマンショック時の経験を踏まえた点は、多々ある。今回の主要国の政府や中央銀行の動きは迅速だと評価できるが、その一例を挙げると、述べた通り、米連銀はCPの買い入れを早々に打ち出した。なぜすぐにこうした策が取れたかと言えば、このCP買い付け制度(CPFF、Commercial Paper Funding Facility)は、リーマンショック直後の金融市場の混乱期のなか、2008年10月28日に創設されたものだ。既存の制度を活用する形で、即時の対応が可能だったと解釈できる。

加えて、たとえばアメリカの社債市場で、特に格付けの低い社債が売られ、価格が大きく下落している。リーマンショック前であれば、アメリカの銀行がこうした社債にも大いに投資を行なっていて、巨額の損失を被り、金融機関の経営破綻につながりかねない、という憶測を招いていただろう。

ところがオバマ政権時に、リーマンショックの反省を活かし、「ボルカールール」が制定された。これによりアメリカの商業銀行は、原則として資産運用は融資と国債のディーリングに限られ、運用としての株式や社債の売買、ヘッジファンドなどへの資金運用委託はできなくなった。したがって、証券市場の混乱からアメリカの銀行の経営が遮断され、金融システムの安全度は、リーマンショック時よりかなり高まっている。

日本株の上昇は「日銀の買いのおかげ」なのか?

ところが「新型コロナウイルスという想定外の材料が現れたのだから、主要国の株価はこれからもどんどん下落するに決まっている」、と思い込んだ向きは「日本株が上昇しているのはおかしい」と唱えているようだ。そうした向きは、「日銀が株式ETF(上場投資信託)を買い、無理やりに株価を上げている」と主張していると聞く。

しかし、3月16日に日銀が臨時の金融政策決定会合を開き、株式ETFの買い付け枠を当面2倍にすると発表、実際には17日から買い入れ額を増やした。日銀の買い入れ額と日経平均の前日比騰落幅はどうだったのかを見てみよう(以下の数字は前者が日銀のETF買い入れ額、後者が日経平均の騰落幅)。

17日:1204億円、9円高、18日:ゼロ、284円安、19日:2004億円、173円安、23日:2004億円、334円高、24日:ゼロ、1204円高、25日:ゼロ、1454円高、26日:2004億円、882円安、27日:ゼロ、7243円高)。

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