コロナ対策の「自粛継続」に専門家たちの葛藤 感染者が爆発的に増えるリスクは消えていない

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2月26日から政府が全国的に大規模イベントの自粛要請をしており、専門家の見解がどうなるのかは大きな焦点だった。

結論としては従来の方針を限定的に解除した格好だ。大規模イベントの開催に当たり、①換気の悪い密閉空間で、②多くの人が密集した状態で、③近距離で会話するという「3つの条件」が揃うことを避けたうえで、入場者の検温や手指消毒などの「非常に厳しい条件」(尾身副座長)を求めた。この方針を受け、3月20日には政府もイベントの一律的な自粛要請は解除している。

ただ、専門家の中からは慎重な意見も出た。「経済的・社会的なインパクトが大きすぎて、厳しい制限を長く続けられない。それでも、(イベント自粛などで従来の)行動が変わらないと流行が拡大してしまうのは事実。今、せきを切ったように活動を元に戻してしまうのかはよく考えていただきたい」(西浦教授)。

事業者に委ねられた「自粛」の判断

専門家の間で意見が割れる中、営業を自粛してきたレジャー施設やイベント事業者は、再開の判断を委ねられたことになる。2月29日から休園が続くユニバーサル・スタジオ・ジャパンは3月29日までの休園を予定している。今回の専門家会議の見解を受けても、「万が一のことを考えると、現段階ではすぐに営業を再開できる段階ではないと考えている」としている。

一方で営業を再開する動きも出ている。としまえんは3月21日から屋外施設に限り営業を再開した。「屋外であれば、専門家会議が示した3つの条件に当てはまらない」という判断からだ。ただし、屋内施設は換気設備が整っていても閉鎖を続ける。

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専門家会議では、国内外の状況を踏まえて「短期的収束は考えにくく、長期戦を覚悟する必要がある」としている。最大の懸念は、オーバーシュートから患者が医療機関に押し寄せて大混乱に陥ることだ。それを防ぐには、長期戦を見据えて感染の拡大ペースをできるだけ抑制しつつ、治療薬の開発を待つことが現実的な方策といえる。

そのため、特効薬やワクチンなどが開発され普及するまで、「3つの条件が同時に重なる場を避ける」という対策は今後も続くだろう。さまざまなイベントに自粛ムードが広がる中、事業者の苦悩は続きそうだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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