「関電再生」には刑事責任の追及が不可欠だ 郷原弁護士に聞く、「金品授受」報告書の核心
贈収賄の立証は十分可能だ
──第三者委員会の報告書は、本文だけで200ページに及びます。一読してどのような感想をお持ちになりましたか。
関電の社内で行われてきた不正行為のおびただしさ、その生々しさに驚いた。電力という公益性の高い事業を営む企業において、こんなにもひどいことが行われていたのかと、委員長を務めた但木敬一氏(元検事総長)も唖然としたのではないか。
──『週刊東洋経済』のインタビューで郷原さんは、第三者委への期待を表明していました。報告書は期待に応えるものでしたか。
事実関係の解明については、おおむね期待どおりものものだったと言える。関電社内のメールサーバーなどに格納されている電子データを対象としたデジタル・フォレンジック調査が、不正の解明に際して成果を上げた。不正の原因分析もしっかりしている。
関電が実施した社内調査報告書とは、質の高さにおいてまったくレベルが異なる。
──他方、但木氏は刑事事件化は困難だとの認識を示しています。金品の授受と個別の工事の受注のタイミングが一致していないことが多く、贈収賄の構成要件とされる「不正の請託」の立証が困難であることを理由に挙げています。
個別の工事との関係うんぬんということで収賄罪が成立しないという但木委員長の説明はかなり苦しい。金品の提供が全体として工事発注の見返りであることを認定しているのであるから、請託がないとは言えないだろう。
理由もなく随意契約の発注をしたり、事前に発注情報を提供していることが不適切であることは報告書も認めているのだから、不正な請託と認める余地は十分にある。
工事業者から直接渡されてきたケースもあるのだから、彼らを取り調べることができる。贈賄側の森山栄治元助役が死亡していることも決定的な支障にはならないのではないか。今回、第三者委が解明した事実だけでも、立証は十分に可能だ。
また、競争入札であれば価格が低下しているところを、あえて随意契約で発注したことで会社に損害が生じたと言えるし、見返りとしての役員への金品の提供があったのだから、形式上は「自己図利目的」も認める余地がある特別背任の立件も不可能ではない。
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