スペースジェット、「巨額減損」でも平気なのか 三菱重工業に押し寄せる「コロナ減速」の波

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スペースジェットと同サイズの航空機は競合が少なく、今後も需要が見込めると三菱重工は主張する。アメリカの規制に対応する次世代機の開発にも着手している。多額の開発費がかかっていることもあり、もはや引くに引けない状況だ。

これまでに投じてきたスペースジェットの開発費はすでに8000億円近くにのぼる。今後のスケジュールの遅れを考慮すると、事業化にかかる費用は1兆円を超えるのは確実だ。

2020年3月期末までに過去に計上していたスペースジェット関連の資産1300億円をすべて減損処理する。今期の開発費1400億円と合わせた関連損失は2700億円にのぼる。

好調なガスタービン事業などで稼いだ2020年3月期の全社の事業利益はほとんど吹き飛ぶ計算だ。ただ、過去に支払った税金分の繰延税金資産を2100億円計上するため、2020年3月期の純利益は前期比微減の1000億円を確保するとしている。

不足する航空機開発ノウハウ

納入延期を繰り返す理由は、三菱重工に航空機の完成品を開発するノウハウが不足していることが挙げられる。ボーイング向けの主翼や胴体といった部品製造の実績はあるが、無数の部品を組み合わせたうえで、どんな事態にも耐えられる完成機を作り出すのには別の経験とノウハウが必要だった。

2016年にカナダのボンバルディアから三菱航空機に移ったスペースジェット開発責任者のアレックス・ベラミー氏は「計画は不透明で、日々の働き方も不適切だった」と移籍当初を振り返る。

2017年の5度目の納入延期の際には電気配線の不具合が判明。設計をやり直し、2019年までにその数は900カ所以上にのぼった。その後、三菱重工の技術者主体だった開発チームに多数の外国人技術者を呼び込み、組織を立て直したことで、「あとは大きな問題はない」(ベラミー氏)という。

最終試験機は2020年初めに完成し、アメリカに渡って型式証明を取得するはずだったが、3月18日にようやく初飛行にこぎ着けたばかりだ。航空機産業の関係者からは「経験豊富なボーイングでさえ、新型機の開発には数年の遅延がつきもの。ましてや三菱重工がすんなり造れるはずがなかった」との声が漏れる。

三菱重工幹部は「不具合がある中途半端な状態で飛ばしてしまって、万が一問題が起きれば会社が持たない。そうなるよりははるかにいい」と話す。

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