野村証券、ネット取引で「大幅値下げ」の勝算

まさかの信託報酬ゼロ、信用金利も引き下げ

代表的なのは、三菱UFJ国際投信が運用する「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」だ。この投信は、最大年率0.10615%の信託報酬のうち、0.042075%ずつが販売会社(証券会社等)と委託会社へ、残りの0.022%が受託会社(信託銀行等)に分配される。

一般的な投信であれば、長期間の積み立て投資では得られたリターンを原資に継ぎ足して投資額を増やしていく「再投資」を行うことが多い。そのため、たとえ約0.1%でも料率の差が後々大きくリターンに響く。ただし、野村のスリーゼロは年間40万円が上限のつみたてNISA専用の投資信託で、信託報酬が無料になるのは2030年までだ。

野村は信託報酬ゼロの投信の取り扱い開始で、「資産形成層の応援・証券人口拡大」を目的に掲げる。ただ、投資未経験者がいきなり「信託報酬ゼロ」と言われても理解は難しい。非対面の販売チャネルで扱うだけに、顧客の裾野拡大を図るには、他社との違いやメリットを伝える工夫が必要だろう。

ネット証券とは真逆の値下げ

「スリーゼロ」のインパクトは未知数だが、ほかの運用会社は野村の動きを注視している。1人ひとりの顧客から得られる信託報酬は少額でも、野村に万単位の顧客を奪われれば、企業の規模によっては収益に対する影響が大きくなるからだ。

「業界最低水準の信託報酬を目指す」と公言している「eMAXIS Slimシリーズ」では、野村の発表を受けて「3月中にも対応について発表したい」(三菱UFJ国際投信の担当者)としており、信託報酬ゼロ化に追随する可能性もある。かつてそうであったように、eMAXISが見直しに動けば、ほかの投信にも波及するだろう。

一方、信用取引の金利引き下げについてはどうか。信用取引では、個人投資家が証券会社から資金を借りて、元手の約3倍程度の株式を売買できる。小さな値動きでも利益を大きくできる一方で、顧客は資金を借りている間、証券会社に金利を支払うことになる。

他社では、信用取引の手数料を無料化すると同時に、金利のほうを引き上げる動きが出ている。例えば、ネット証券大手で2019年12月に信用取引の手数料を無料化したauカブコム証券が2.79%から3.79%まで金利(一般信用取引で資金を借り入れて株を買うために支払う買方金利)を引き上げている。野村の動きはこうした流れとは真逆といえそうだ。

ネット限定とはいえ、野村はなぜ3%から0.5%へという大幅な信用取引金利の引き下げに踏み切ったのか。その目的について「信用金利引き下げはすでにネットで株をやっているお客様に対してのメッセージ」(鈴木伸雄・野村証券プロダクツ・ソリューション担当執行役員)と説明する。

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