中国のキャッシュレス「物乞いまで」浸透した訳

政府による「GAFA締め出し」が功を奏した

こうしたキャッシュレス社会の立役者となったのは、中国を代表する巨大IT企業アリババの開発した決済アプリ「アリペイ」と、テンセントが開発したチャットアプリ「ウィーチャット」である。

パリに本社をもつ世界第3位の市場調査会社「イプソス」が、中国のキャッシュレス事情についての調査結果(「2019第三季度第三方移動支付用戸研究報告<=2019年第3クオーター モバイル決済ユーザー研究報告>」)を発表している。それを読むと、アリペイとウィーチャットの存在の大きさがよくわかる。

現金派はもはやマイノリティー

日常生活の買い物で最もよく使う支払い方法について調査した結果、モバイル決済(スマホを使ったキャッシュレス決済やネット決済)と回答した人は全体の61%、カード決済(中国のカード決済は、クレジットカードではなく銀行のキャッシュカードを使ったデビットカードが主流)は23%、現金は14%だった。現金派は、圧倒的にマイノリティーだ。

ウィーチャットペイ(QQ銭包など、テンセントが運営するその他キャッシュレス決済も含む、以下同)のユーザー浸透率は全体の92.4%にのぼり、アリペイの浸透率も72.1%を記録した。

3位以下は銀聯カードの「銀聯雲閃付」27.2%、「京東銭包」17.9%、「翼支付」10.6%、Apple Pay 8.1%、ファーウェイペイ8%と続く。取引金額をベースに調査すると、ウィーチャットペイ46%、アリペイ43%、銀聯雲閃付6%、4位~15位までの合計5%となっている。キャッシュレス決済のほぼ9割を、アリペイとウィーチャットペイが分け合っている計算になる。

アリペイを運営するアリババは、当初はショッピングモール「淘宝」の運営で急成長し、アリペイもネットショッピングでの利用を起点に拡大した。強引に日本に例えるなら、「楽天ペイ」が普及し、天下を取ったようなものだろう。

一方、ウィーチャットペイはチャットアプリ「ウィーチャット」から生まれたため、日本に例えるなら「LINEペイ」に相当する。アリペイのサービス開始時期は2004年であるのに対し、ウィーチャットペイは2013年。約10年のギャップがありながら、チャットアプリという利便性の高さを武器に、近年アリペイの市場を奪いつつある。

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