2度目のコロナ会見、安倍首相は何を語ったか 緊急事態宣言に慎重だが、時限的消費減税も

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ただ、この発言は、日本での早期感染収束や世界的パンデミックの収束を前提にした建前論との見方が大勢だ。「すでに、IOC内部では最悪の事態に備えたシミュレーションが進んでいる」(政府筋)とされるだけに、政界でも「首相は日本要因での中止や延期だけは避けたいのが本音で、現時点では強がりでしかない」(自民幹部)と受け止められている。

そうした中、冒頭発言を受けて真っ先に質問されたのはやはり「後手批判」だった。入国制限の遅れを質された安倍首相は、「水際対策は適切に判断してきたと考える」と反論。4月の習近平中国国家主席訪日との絡みで対応が遅れたとの指摘にも「そんなことはまったくない」と強い口調で否定した。

ただ、習主席訪日中止の決定直後に中国や韓国に対する入国制限が発表された経緯もあり、与党内でも「首相の言葉を素直に国民が信用するはずはない」(閣僚経験者)との声も出た。

2回目会見ににじむ余裕の表情

質疑の終わりには緊急事態宣言について、「私権制限につながる以上、総理や政権への信頼が重要」として、東京高検検事長の定年延長問題を絡めた質問も出た。これに対し、安倍首相は質問中に「待ってました」といわんばかりの余裕の笑顔をみせ、「法務省が判断されて閣議決定したもので、適切な判断だった」と返答。

併せて「緊急事態の宣言を出すのはそう簡単な判断ではない。専門家の意見だけでなく国民の納得が必要と思うから、その際には記者会見を私が開いて丁寧に説明したい」と力説した。

2回目のコロナ記者会見は、安倍首相にとって「政治的な損得勘定でみれば、前回よりはプラスが大きかった」(自民幹部)のは間違いない。会見を終えた安倍首相の表情にも自信と余裕がにじんでいた。

週明けの16日には参院予算委での集中審議が実施されたが、コロナ関連の質疑での首相の答弁は、14日の会見内容をそのままなぞったもので、野党側も攻めあぐんでいる。

政府のコロナ対応の次の節目は、3月19日ごろとされる専門家会議の現状分析公表だ。1日当たり100人を大きく超えるような感染者激増がなければ、19日の時点でも「何とかこらえている状況」(専門家会議)が続くことになる。ただ、現在の総自粛態勢の部分的解除につなげられるかどうかは「期待薄」(同)との見方が多いだけに、3月末に想定されるコロナ会見第3弾で首相が今回同様の余裕の表情で「出口戦略」を口にできるかは、「まだまだ見通せない」(官邸筋)のが実情だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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