東京五輪中止論浮上で追い詰められる安倍首相 消費税引き下げ浮上、中止なら安倍退陣必至
延期論は、橋本聖子五輪担当相が3月3日の国会で「IOCとの契約では年内なら延期は可能」と答弁したことで大騒ぎとなったばかりだ。その頃から自民党内でも五輪中止への危機感が広がり、鈴木俊一総務会長が「その場合はすぐ責任論が持ち上がる」と指摘するなど、政権の命運にもかかわる事態との認識が広がっていた。
コロナ対応を指揮するWHOのテドロス事務局長は現地時間の11日、「コロナウイルスによる史上初のパンデミック(世界的流行)だ」と深刻な表情で語った。WHOがパンデミックを宣言するのは2009年の新型インフルエンザ以来11年ぶりのこと。安倍首相は12日午前、「これまで以上に国際社会と協力しながら対応を強めていきたい」とあくまで平静を装った。
安倍首相は「政権を投げ出す」との声も
ただ、WHOのパンデミック宣言によって世界的な不安拡大は避けられない。「今後も感染拡大が続けば、各国が五輪参加を躊躇し、国際的に中止や延期論の流れが加速するのは当然の成り行き」(外務省筋)でもある。
そこで問題となるのが安倍首相の政権運営への影響だ。今のところ日本での感染拡大は「何とか(爆発的感染を)こらえている」(専門家会議)とされる。しかし、安倍首相らの言う「瀬戸際の1~2週間」が長引き、3月下旬以降も収束のメドが立たなければ、五輪中止論も勢いを増してくる。
永田町でも「日本にとっての決断のタイムリミットは5月の連休前」(自民幹部)との声が大勢だ。仮に感染拡大を抑制できないことが原因で五輪の中止や延期となれば、「『政治は結果責任』と繰り返してきた首相の責任論は免れない」(閣僚経験者)ことになる。与党内でも「安倍首相が政権を投げ出す可能性は否定できない。その場合、6月中旬の国会閉幕時が退陣表明のタイミングとなるのでは」(自民長老)との声も出始めている。
一方、国内の感染拡大防止に成功し、世界各国の感染拡大で結果的に五輪中止・延期となったケースでは、「首相の責任論は避けられる」(周辺)との見方が出る。その場合でも日本経済への打撃は深刻だが、「パンデミックはいつかは収まる。そのときのために大胆な経済対策を打ち出せば、首相の求心力は維持できる」(自民幹部)というわけだ。
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