「逆ギレ」サウジは米国に「戦争」を仕掛けている 原油市場の崩壊後はいったいどうなるのか

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ただでさえ相場が急落している時に、出荷価格がそうしたベンチマークからさらに大幅な引き下げとなるのだから、顧客である消費国にとってはとんでもない値下がりとなる。ロシアに追加減産を拒否され、生産調整によって相場を押し上げることが極めて難しくなった中、サウジはアメリカのシェールオイル業界との価格戦争を再開、価格の維持ではなく、世界市場におけるシェアを広げるという方向に方針を転換したということなのだろう。

サウジの当局者は市場関係者に対し、非公式ながら「4月に日量1000万バレルを大幅に上回るまで生産量を増加させる意向」を明らかにしたと伝わっている。場合によっては日量1200万バレルまで引き上げる用意があるとも述べており、同国の増産に対する意欲は本物だと、見ておいたほうがよさそうだ。もし、サウジが増産に転じれば、他の産油国もそれに追随せざるを得なくなり、今後の石油生産は大幅に増加することが必至と思われる。

2月にOPECが発表した月報によると、1月のOPECの生産量は日量2886万バレルで、OPECに対する石油需要を僅かに下回っており、足元の世界市場は需給バランスがほぼ取れた状態にあるということが出来る。だが、もし、これが現在の減産が行われる以前の2018年10月の時点にまで戻ってしまうのなら、生産量は日量3200万バレルを超えることになる。今後景気の減速や季節的な暖房需要の減少により、需要がさらに落ち込むことを考えれば、世界市場は日量400万バレルを超えるような供給過剰に陥ることも十分にあり得る。

「逆ギレ」サウジが原油市場を崩壊させる

追加減産に失敗したサウジの「逆ギレ」によって、石油市場は今まさに崩壊の危機にあると言っても過言ではない。状況次第では、1バレル=20ドル台前半あたりまで価格下落が進むことがあっても、何ら不思議ではないというのが実際のところだろう。

一方、サウジに再び喧嘩を売られた格好となるアメリカのシェールオイル業界であるが、こちらの方も状況はかなり厳しくなっている。前回価格競争が仕掛けられた2016年前後には、価格の下落にも関わらず見事サウジを返り討ちにした。これは好景気や株価の上昇を背景に、ウォール街から潤沢な資金供給を受けたことで、採算が悪化する中でも破綻を免れた業者が多かったことが背景にある。

しかし今回は新型コロナウイルスの感染拡大や世界的な景気減速によって株価が急落、投資家にそこまでの余裕はなくなっている。社債市場でも信用が急速に収縮してきており、資金の調達は当時より遥かに困難になっていると見ておくべきだ。

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