「うちの社長はダメだ」と嘆く社員に欠けた視点 日本の大企業を蝕んでいる原因は何なのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
2. 何で現役社長が後継社長を選べるのか

何で現役社長が後継社長を選べるのかといえば、それは「日本では株主総会が機能していない」からである。

銀行や生命保険会社などの安定株主が減ったとは言え、現在でも東証上場企業の安定株主比率は35%程度。安定株主以外の株主は誰かと言えば、個人が31%、国内の年金、投信が13%、海外投資家が16%。個人の議決権行使比率が30%、海外投資家の議決権行使比率が70%とすれば、議決権を行使する株主は全体の70%となり、安定株主の議決権比率は50%を占める。

さらに、国内年金、投信は、銀行や証券会社系列の投資顧問、投信会社により運用されているから、事実上は安定株主である。個人株主だって、会社のサポーターが相当いる。その結果、ほとんどの日本企業では、事実上の安定株主比率は50%をはるかに超え、会社提案の議案が確実に通るのである。

取締役会を構成するメンバーは……

このような株主構造、議決権行使構造になっているから、会社の議案を作る権力を持つ社長が圧倒的権限を握る。社長は、株主総会で自分の“子飼い”の部下を取締役に選任したいという議案を出し、それが株主総会で自動的に承認される。この結果、取締役会は社長の子分たちばかりになる。

社長(代表取締役)選任は取締役会で決定されるから、現役社長が、自分が続けたいと言っている限りは自分が選任される。社長が引退して会長になると決めたときは、後継社長を指名し、それが自動的に承認されることになる。

3. なぜ現役社長は、仕事ができない人間を指名するのか

現役社長が後継社長を指名すると、自分自身は会長になる。会長は、いわばリタイアした社長。業界活動などの社外活動に励み、会社の意思決定から離れるというのが建前だ。しかし、多くの会長は、そう簡単には枯れない。いかにして後継社長を通して会社の経営に影響力を残せるかを考える。

影響力を残すためには、自分の言うことをなんでも聞く子分を後継に選ぶのが正解だ。会長になっても、自分に敬意を払ってくれる奴、自分の言ったことを忠実に実行してくれる奴を選ぶ。こういう奴は、ソンタク人間、周りの人の意見をよく聞く人である。俗にいう「人望のある人」だが、実は、多くの人の意見を聞き、皆の顔を立てすぎて、「何も決められない人」でもある。

実力派の副社長などはもってのほか。せっかく自分がやってきたことを否定して、新しいことをやり出す奴などは絶対ダメだ。できれば、ヒラの取締役、常務に上がったばかりの奴、自分と5、6歳年が離れた奴、新入社員のときに自分が指導して一人前にしてやった奴、気ごころの知れた奴を指名したい。そうすれば、「よくぞ私を社長に選んでくれました。この御恩は一生忘れません」と死ぬまで忠誠を尽くしてくれる。

次ページ何代にもわたる上下関係
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事