ユニクロと無印、新型肺炎でも前年超えのワケ 感染広がる中、アパレルや雑貨の販売で明暗

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また、卒・入学式用のフォーマル服やフレッシャーズの需要で、毎年2~3月の春先を繁忙期とする紳士服チェーンも、相次ぐ式典の中止によるダメージが計り知れない。「洋服の青山」を展開する紳士服国内最大手の青山商事は、2月の既存店売上高が前年同月比で14%減。主力であるスーツ販売の落ち込みが大きかった。

懸念は物流と生産の遅れ

2月の実績では明暗が分かれたアパレル各社だが、比較的好調だった企業の間でも「2月はなんとか逃げ切った。正念場は3月」との声が漏れる。

政府が大規模なイベントの自粛や小中高の休校を呼びかけたのは2月の最終週であり、「その前後から全国的に外出や不要不急の買い物を控える動きが顕著になった。今や仕事帰りに洋服を買っているムードでもなく、この状況が続けば3月の既存店売上高は各社軒並み前年割れとなるだろう」(中堅アパレル幹部)との見方もある。

海外生産が9割以上を占めるアパレル業界では、中国での物流や生産の遅延により、4~5月に売る予定だった春夏商品の納品遅れも懸念されている。

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中国の縫製工場は順次活動を再開しているものの、地元政府への許認可の問題などもあり、本格稼働に至っていない工場も多いのが実情だ。たとえ商品が完成していても、中国から日本への輸送便も減便となっていることから、当初予定していた発売時期に納入が間に合わない商品が出てくる可能性や、人気商品の欠品が長引く懸念もある。

縫製をASEANの工場に移しているアパレルでも、生地やボタンなどの付属品は技術力の高い中国の工場で作っているケースが多く、それらの材料集めに時間がかかれば、商品供給の遅れを免れない。

今回のような消費者の生活防衛意識が高まる局面においては、食品や医薬品などと比べて洋服や雑貨は購買の優先順位が後回しにされがちだ。アパレルや雑貨専門店への販売・生産両面での打撃は、3月以降本格化する色合いを強めている。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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