バイデン氏「逆転」でも混迷する民主党候補選び サンダース氏を警戒、企業はトランプ支持

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トランプ氏にとっては、穏健派のバイデン氏が指名を獲得し、民主党の党内が団結することがもっとも嫌な展開だろう。バイデン氏は「本戦での激戦が予想される中西部州に強い」(渡辺氏)。

また、民主党候補としての指名を獲得すれば、前大統領のバラク・オバマ氏が全米を回ってバックアップする見込みだ。オバマ氏は依然としてアメリカ国内で高い人気を保っており、オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏の力強い援軍となるのは間違いない。 

金融界の本音は「トランプ再選」

アメリカ金融界のメッカであるウォール街は大統領選をどのように見ているのか。大和総研ニューヨークリサーチセンターの矢作大祐研究員は、「サンダース氏が2月のアイオワ、ニューハンプシャー、ネバダで優勢だったことで、『サンダースリスク』を気にする人が増えた。ウォーレン氏ほどではないが、サンダース氏は富裕税や国民皆保険といった金融ビジネスを下押しするような政策を掲げており、ウォール街の懸念を高めている」と分析する。

サンダースの政策を実現するには財源が必要で、中間層などにも増税しなければ国民皆保険も夢のまた夢。「もし増税の幅や増税対象が増えれば、個人消費の下押しなどを通じて企業収益が悪化し、マーケットにネガティブに働く」(矢作氏)。

一方、「穏健派のバイデン氏勝利のほうがサンダース氏やウォーレン氏の勝利に比べてウォール街にとってはマシ。ただ、民主党候補者はいずれも増税などを考えているため、できればトランプ氏再選というのがウォール街の本音ではないか」と矢作氏は見る。

なお、矢作氏が日本企業などにヒアリングしたところ、「サンダース氏が大統領になると、再びパイプがなくなり、ロビイングがしにくくなる」という話があったという。「2016年にトランプ氏が大統領になった際にも、同様の現象が起きたが、ようやく『トランプ慣れ』してきたところで、トランプ氏に勝ってほしい企業も多いような肌感覚がする」という。

トランプ氏には通商面、外交面で散々振り回され続けている日本企業だが、民主党の大統領候補選びの混迷ぶりを見ると、「政権交代を大歓迎」というわけにはいかないようだ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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