外国人の「不法就労」が今でもやまない深刻実態

労働者を食い物にする悪質ブローカーも存在

その1つが、技能実習生の失踪問題だ。実習先から失踪した技能実習生の数は2018年度で9052人が報告されている。また、摘発された不法就労者の数も1万0086人と増加の一途を辿る。このうち実に半数近くをベトナム人が占めている。先出のダンさんが続ける。

「技能実習生で日本に来るのはエリートです。そんな技能実習生や日本で働くベトナム人の中には、給料が払われなかったり、厳しいイジメにあって逃げ出して在留資格を失った人もたくさんいる。とくに地方に行くほどひどい状況で、労働環境は過酷です。

それに『技術実習生よりも不法就労のほうが稼げる』という認識もある。日本にいるベトナム人のコミュニティーの中で、そういった情報は聞こえてきます。私も含めて、国に帰りたい人は多い。でも、日本に来る際に200万円以上の借金をして、家族に仕送りをするためにこの国に来ているから帰れない……」

企業側の労働環境の整備も喫緊の課題だ

先述したように、入管法違反による不法就労は、取り締まりを強化する傾向にある。2014年段階で6702人だったことを考えれば、5年間で3000人以上、検挙者が増加している計算になる。在留資格問題に詳しい、ある国会議員はこう話す。

「入管では在留番号を登録されているので、番号を入力すればその数字が有効かどうか出る。それが明らかに怪しい人間がいてチェックしてみても、在留資格は有効なんですよ。有効なんですが、何であなたが定住者でいられるの?という方はたくさんいます。入管は今後、さらに厳しくなりますが、同じような偽造は続く可能性は高い。真っ当な在留資格を持つ技能実習生は別として、それ以外の方を雇うのはグレーなケースもあり、対応策も限界がある。

グレーな存在である彼らの立場からすれば余計なことは話せない。そんなわけで、日本人の目からみると『あいつはマジメだよな』と評価される傾向が強く、(不法就労する)東南アジアの人は重宝されるわけです。ただマジメの評価を得て、言いたいことを我慢した結果、突然爆発するというケースも相次いでいます。六本木や新宿だけでなく、全国の繁華街には在留資格を失ったベトナム人の不良グループが存在し、犯罪も起きています。企業側の労働環境面のケアは、今後も受け入れを進めるうえでは必須となります」

大泉町で、別の社会保険労務士に不法就労がまかり通る現状について尋ねたところ、不法就労の多さを認めつつも、こんなふうに語った。

「企業側からすれば、在留資格が偽物であろうと考える余裕がないのが実情でしょう。雇わなければもう体力が持たない。大手企業はいいですが、その下請けの中小企業は彼らの労働力がなければ潰れていきます。

1980年代から人手不足の傾向がずっと続いており、ブラジル人を中心に南米から多くの労働者を受け入れたけれど、それでも圧倒的に労働力が足りない。企業側からすれば、セーフティーネットへの費用も抑えられる。いわばこの地域の産業が生き残るためには、不法就労者の存在は一種の“必要悪”と思い目をつぶっている人もいます」

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