定年前後のお金と手続きがわかる意外な相談先 ファイナンシャルプランナーには頼れない?

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「一足先に定年退職した先輩」が頼りになる2つ目の理由は、先に体験したことから後輩には気づけない注意点を教えてくれるのです。

私は、退職した先輩から「辞めた翌年の住民税はがっぽり取られるから気をつけろ」というアドバイスを受けました。住民税は所得税と違って、前年度の所得に対して翌年課税されます。つまり、現役時代で比較的収入の多かった時を基準に税額が決まり、その金額が、収入のなくなった退職後に請求されるのですから、それを見たときのショックは大きくなります。あらかじめ、それを先輩に教えてもらっておいてよかったと、つくづく感じたものです。

3つ目の理由は「制度を運営する側の説明よりも、それを利用する側の説明のほうがわかりやすい」ということです。これは定年後の社会保険に限らず、何事においてもいえることでしょう。行政窓口での手続きの説明など、非常にわかりにくいと感じることはないでしょうか。これは説明する側が専門家で、ごく簡単なことだと思って説明するのですが、聞くほうは素人で初めてだからです。したがって、もともと素人だった先輩が苦労して体験して知ったことを説明してもらい、コツを教えてもらうのがいちばんいいのです。

定年後の「生き方」まで先輩に倣ってはいけない

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ただ、1つ気をつけなければならないのは、あまりにも昔に退職した先輩に聞いても参考にならない場合があるということです。なぜなら、会社の制度が変わっている可能性があるからです。できれば、この数年以内に退職した先輩に聞くのがいいでしょう。そのほうが現実的な答えが得られると思います。

「定年後が不安……」と感じる最大の原因は「自分が体験したことがない」ことにあります。それを解消するには、すでに体験した人、それも自分と同じような境遇で体験した人に話を聞き、「見える化」することです。ただし、聞くべきことは「具体的な制度や手続き」に関してのみに限定したほうがいいと思います。定年後の生き方やマインドについては人それぞれで、まったく考え方が異なります。

こればかりは正解がなく、「定年後」をどう捉えるか、さまざまでしょう。中には、ネガティブオーラを発散している人だっています。そういう人からは影響を受けないようにしたいものです。生き方や身の振り方はあくまでも自分自身で考え、自分のやりたいことを通すべきではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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