鉄道「踏切事故ゼロ」実現のために必要なこと 踏切ありの時速200km走行と新線建設は可能
踏切事故は、下図のように、関係者の努力により事故件数・死亡者数・負傷者数とも減少が続き、2018年度の件数228件、死亡89人は、最も多かった昭和30年代半ばの約15分の1である。事故は、すべきことを着実にすることで減らせるのだ。
今回、踏切の踏切障害物検知装置は警報前から「トリコ」となっていたトラックを検知し、340m遠方の特殊信号発光機により運転士に伝えられていた。それは時速120kmから非常ブレーキで止まれる520m手前から見通せたが、運転士は「通常ブレーキの後に非常ブレーキをかけた」と話している。
列車がトラックと衝突後に停止するまで70mを要したことから、踏切箇所でおそらく時速50~80kmにしか減速しておらず、非常ブレーキをかけたのは踏切手前300m前後だったと推定される。
安全とともに「輸送品質」も大切
大都市鉄道では、警報開始後でも踏切を渡り始め、遮断器が下がりきった後でも渡りきれない人が少なくない。この場合、踏切内にいる人は障害物として検知され、特殊信号が頻繁に発光するが、踏切内から出れば数秒で消える。運転士が特殊信号の発光を見てすぐに非常ブレーキをかけなかったのは、列車を遅らせて「輸送品質」を落とすことを防ぐためだったと推察する。鉄道における輸送品質とは、スケジュール通りに運行することだ。
社会のため、経営のために「輸送品質」を保つことは大切だが、重大事故は絶対に許されない。改めて抜本的な事故防止策を考えよう。
鉄道は、痛ましい事故を経験するたびに「人は誤る、合理的でないルールは破る」という前提で安全対策を高度化し、事故を減らしてきた。
踏切事故は警報機のない第4種踏切や作場道(勝手踏切)と機器故障での事故を除くと、警報前からの「トリコ」と遮断後の「無謀侵入」の2類型しかない。すべきことをすれば立体交差化しなくても、この2類型の事故は減らせ、最終的には撲滅できるはずだ。
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