吉野家、P&G出身役員が変えた「牛丼の売り方」 「ポスターがどう見えるか」から商品を企画
――最近はテレビなどのマス広告から、SNSなどデジタルツールを使った販促に力を入れる動きも増えています。
「デジタルの時代」とみんな言うが、テレビ広告はいまだにもっとも有効な広告手段だ。われわれのように1000万人以上の顧客に来店を促す業種の場合、テレビ以上に有効な手段はない。ただ、テレビCMの打ち方は変えた。
以前は、新商品を発売するタイミングで集中的にCMを流していたが、予算は変えずに、より長い期間に平準化して広告を出すようにした。1週間に15回吉野家の広告を見ても、15回食べに来てくれるわけではない。ところが3週間のうち数回見ると、3回来てくれる可能性がある。
加えて期間限定商品ばかりでなく、半分くらいは牛丼のCMを打つようにした。テレビCMに投資するのは貴重な機会。いちばん売れている商品は牛丼なのだから、そのCMを打った方が効果は大きい。
基本的な方針を変えるつもりはない
――今期は業績が大きく回復しました。今後はどうやって成長していきますか。
基本的な方針を変えるつもりはまったくない。戦略はつねに見直す必要があるが、うまくいっている間は変えることが最大の失敗になる。そのときの状況の中でいちばんいいと思う戦略を実行し続ける。
(吉野家の)ライバルは飲食店ではなく、コンビニやスーパー、冷凍食品だ。年365日、1095回の食事のうち、平均的な外食回数は100回程度と言われている。ということは、われわれにとっては、あと1000回もチャンスがある。100の池でラーメン店やファミレスと戦うより、1000の海から取る方が楽でしょう。頭の引き出しにコンビニがある人にはコンビニに勝つ策を、冷凍食品がある人には冷凍食品に打ち勝つ策を考えていく。
よい商品と強いブランドがある。これを売れなかったら、マーケティングを生業にしている僕の意味がない。めちゃくちゃ面白いですよ。
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