吉野家、P&G出身役員が変えた「牛丼の売り方」 「ポスターがどう見えるか」から商品を企画

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――これらの施策の背景に、どんなマーケティング理論があるのですか。

特別なことはしていないが、唯一使っているのが「引き出し理論」という考え方だ。人間の頭の中に引き出しがあるイメージで、その引き出しを開けたときに手前にあるものを買うのが購買行動だ。例えば、「時間がないからご飯を手短に食べたい」という引き出しを開けたとき、吉野家は手前にいる。

どの引き出しを開ける人が多いか。その引き出しの中でいかに吉野家を手前に持っていくか。この2つの組み合わせだけで考えている。これまでは「高タンパク・低糖質」という引き出しや「できあいの食事を買って帰る」という引き出しに吉野家は弱かったが、一度その引き出しに入ると、また想起してもらいやすくなる。

「どう見えるか」から商品を企画する

――広告の予算が限られている中、どんな工夫をしているのでしょうか。

われわれの強みは全国に1200の店舗があること。通勤や通学の際に店舗の前を通る人が顧客の大半だ。ということは、行きと帰りの1日2回アピールできる。だから店頭のポスターにはものすごく力をかける。目に一瞬でも入ったときに、「食べたい」と思ってもらうものを作ることが必要だ。

新しい商品を思いついたとき、「店に貼るポスターがどう見えるか」を最初に考える。そこから逆算して、商品開発部に「こういう商品にしてほしい」と言っている。「どう見えるか」から商品を企画するという点は、ほかのマーケティング担当者と違う点かもしれない。

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