「キャリア中断に及び腰な日本人」の致命的問題 「社員に回り道を許さない」日本企業の悪癖
ワークライフバランス先進国として有名なベルギーには「タイムクレジット制度」があり、政府が労働者のキャリア中断を支援しています。この制度では、休職中の労働者には毎月数百ユーロの補助金が支給されます。会社はタイムクレジットを取る社員を解雇することはできず、休職から復帰する社員を同じ待遇で迎える必要があります。
「キャリア中断」を嫌う日本社会
一方、日本では政府も企業も、育休以外のキャリア中断を積極的に支援する気運は高まっていません。
そもそも働く側も、キャリア中断は絶対的に悪いこと、何が何でも避けるべきことだと考えています。ネットで「キャリア中断」と検索すると、出産・育児の悩み相談サイトが並び、そこには「職場に復帰しにくい」「昇格・昇給で不利になる」「出産を諦めるべき?」といった悲痛な声があふれています。
海外留学は代表的なキャリア中断ですが、近年「留学でキャリアを中断したくない(させたくない)」という従業員(企業)の要望に応えて、国内に夜間・週末の社会人大学院が次々と設置され、逆に海外留学者は激減しています。
たしかに、キャリア中断にはいろいろな不利益があります。まず、中断の間は収入がなくなります。あるいは減ります。技術・市場の変化が激しい業界では、仕事に復帰したら浦島太郎状態になっていた、ということがよく起こります。
また、日本固有の問題として、キャリア中断によって昇格・昇給で不利になるという現実があります。日本では大手企業の8割以上が「職能資格制度」を採用しており、能力を評価して昇格・昇給を決める仕組みです。ただ、長期の勤続を通して能力が上がっていくという暗黙の前提があり、キャリアを中断すると能力評価が下がり、同期入社に昇格・昇給で遅れを取ってしまいます。
さらに、日本の退職金税制は、勤続年数で控除額が決まる仕組みで、しかも勤続年数が20年を超えると控除額が大きくなります(勤続年数が20年以下は1年当たり40万円、20年超は70万円)。休職・転職などキャリアを中断すると、退職金支給額が目減りしてしまいます。
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